2020年1月16日、架空のビジネスによって巨額の資金をだまし取ったとして、警視庁捜査2課は会社役員の男ら2人を詐欺容疑で逮捕したと発表しました。逮捕されたのは、京都市に住む69歳の会社役員、和田清容疑者と、39歳の会社員、兼近香織容疑者です。警察の調べに対して、現在2人は容疑を否認しているとのことです。大企業のグループ企業を舞台にした今回の事件は、巧妙な手口によって巨額の損失を生み出しており、社会的な関心を集めています。
容疑のきっかけとなったのは、2016年11月から2017年1月にかけて行われたとされる不透明な取引でした。和田容疑者が経営していた研磨剤販売会社が、中国から研磨剤の原料である「炭化ケイ素」を輸入して販売すると嘘の計画を持ちかけたのです。そして、化学製品の販売を手掛けていた昭和電工の孫会社「ビー・インターナショナル」から、約13億円という巨額の資金をだまし取った疑いが持たれています。なお、この被害に遭ったビー社は2018年に解散しています。
今回の事件で悪用されたのが「循環取引」という手法です。これは複数の企業が結託し、実際には商品のやりとりがないにもかかわらず、書類上だけで売買を繰り返して売上を水増しする不正な取引を指します。具体的には、ビー社が和田容疑者の会社から炭化ケイ素を購入し、それを和田容疑者が経営する別の会社へ価格を上乗せして転売する形をとっていました。しかし、実際には炭化ケイ素が中国から輸入された形跡はどこにもありませんでした。
和田容疑者側からビー社への支払いは3カ月後という設定になっており、その時間差を利用して資金を融通していたとみられます。警察は、和田容疑者が自身の会社の運転資金を確保するために、この複雑な取引の仕組みを考案したとみて捜査を続けています。このニュースに対しSNSでは、「一見すると普通の取引に見えるから見抜くのが難しい」「支払いを先延ばしにする猶予期間を悪用した典型的な手口だ」といった驚きや冷静な分析の意見が飛び交っています。
事件の全貌が明るみに出たのは、ビー社の親会社である昭光通商が2016年11月に実施した監査がきっかけでした。同社が公表した報告書によると、この不正なやりとりは2017年2月ごろまで約6年間にわたって続けられていたそうです。その期間の総取引額はなんと約175億円にものぼり、最終的にビー社が回収不能となった金額は約8億4千万円に達しています。長期間にわたりチェック機能をすり抜けていた点に、企業統治の課題が浮き彫りになりました。
編集部の視点として、今回の事件は親会社やグループ全体のコンプライアンス体制に重大な警鐘を鳴らしていると感じます。孫会社という、親会社の目が届きにくい死角で6年もの間不正が見過ごされていた事実は極めて深刻です。帳簿上の数字だけに頼らず、実際の物品の流れや取引の実態を厳格にチェックする仕組みがなければ、どれほど大企業のグループであっても簡単に足元をすくわれてしまいます。企業の信頼を守るためにも、徹底した再発防止策が求められます。
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