四国電力の伊方原子力発電所3号機を巡り、日本のエネルギー政策を揺るがす大きな司法判断が下されました。広島高等裁判所は2020年1月17日、原発から50キロ圏内に暮らす山口県東部の島民3人の訴えを認め、運転を差し止める仮処分を決定したのです。
この決定はSNS上でも瞬く間に拡散され、「住民の安全を最優先した画期的な判決だ」と歓迎する声が相次いでいます。その一方で、「電力不足や電気料金の値上げに繋がらないか不安だ」といった生活への影響を懸念する投稿も多く見られ、議論が白熱している状況です。
今回の手続きは「仮処分(民事保全法に基づく迅速な救済措置)」であるため、直ちに法的効力が発生します。そのため、今後の法的な手続きで覆らない限り、四国電力は当面の間、伊方原発3号機を動かすことができなくなってしまいました。
現在、この原発は定期検査のために停止しており、四国電力は2020年4月27日に営業運転の再開を予定していました。しかし、今回の決定によってその計画は完全に頓挫した形となり、会社側の経営だけでなく、国全体のエネルギー戦略にも多大な影響を及ぼすでしょう。
これに対して四国電力は「到底受け入れることはできない」と猛反発しており、速やかに不服を申し立てる方針を固めています。東京電力福島第一原発の深刻な事故以降、原発の運転を認めない司法の判断はこれで5件目となり、司法の姿勢が厳格化していることが伺えます。
焦点となった活断層と阿蘇山の巨大噴火リスク
今回の裁判で激しく対立した争点は、原発の近くに存在する「活断層(過去に動き、今後も動く可能性のある断層)」の有無や、約130キロも離れた熊本県の阿蘇山が噴火した際の影響についてでした。
広島高裁の森一岳裁判長は、原発の至近距離に活断層が存在する可能性を否定できないと厳しく指摘しました。それにもかかわらず、四国電力が十分な調査を行わず、原子力規制委員会も稼働に問題がないとした判断には不備があると踏み込んだのです。
さらに大きな決め手となったのが、阿蘇山の火山リスクでした。裁判長は、原発の運用期間中に一定規模の噴火が起きることを想定すべきだと示し、その際に飛散する火山灰の量が、四国電力の予想よりも約3倍から5倍に達すると算出しました。
つまり、四国電力が設定していた安全対策の前提が甘すぎるという結論を導き出したのです。なお、今回の差し止め期間は、山口地方裁判所岩国支部で現在も続いている本訴訟の判決が言い渡されるまでと指定されました。
実は、一審にあたる2019年3月の山口地裁岩国支部の決定では、「原発の稼働中に阿蘇カルデラが巨大噴火を起こす可能性は低い」として住民側の訴えを退けていただけに、今回の高裁での逆転劇は世間に大きな衝撃を与えています。
伊方原発3号機は、2017年12月にも広島高裁から火山リスクを理由に運転差し止めを命じられた過去があります。その後、異議審で一転して稼働が認められ、2018年10月に再稼働を果たした経緯がありますが、再び厳しい現実を突きつけられました。
私は今回の判決について、自然災害の予測が困難な日本において、司法が最悪の事態を想定した英断を下したと考えます。目先の経済性や電力供給の安定はもちろん大切ですが、一度事故が起きれば取り返しのつかない事態を招くからこそ、安全への投資や評価は過剰なほどであるべきです。
コメント