新聞の俳壇コーナーは、私たちの何気ない日常を鮮やかに切り取る素晴らしい窓口です。2020年1月18日に発表された「茨木和生選」の俳句の数々が、多くの読者の心を捉えて離しません。冬の厳しい寒さのなかで懸命に生きる人々の姿が、生き生きと描き出されています。
SNSでも特に大きな反響を呼んでいるのが、前田尚夫氏による受験生を詠んだ一句です。絵馬に九つもの志望校を書き連ねた切実な姿には、現代の厳しい受験を勝ち抜こうとする熱意が満ちています。少子化が進む現代ですが、受験生の戦いは決して形骸化していません。
「煤逃(すすにげ)」という、年末の大掃除の騒々しさを避けて外出する風流な季語を用いた七木田清助氏の作品も魅力的です。太平洋の美しい夕日を眺めてリフレッシュし、帰宅すると新年の準備が万端という、どこかユーモラスで贅沢な時間の使い方が羨ましく思えます。
雪国の厳しい現実と伝統を繋ぐ人々の営み
一方で、渡邉しゅういち氏の句からは雪国の過酷な現実が浮き彫りになります。かつてのように70歳で隠居生活を送る余裕などなく、豪雪のなかで雪下ろしに励む高齢者の姿は、現代の地方が抱える超高齢化社会の縮図と言えるのではないでしょうか。
古谷多賀子氏は、冷たい「秩父颪(ちちぶおろし)」という埼玉特有の強い冬の季節風を喜ぶ和紙職人の姿を描きました。凍えるような冬の水仕事は過酷ですが、この風のおかげで上質な和紙が乾くという職人の誇りと、自然への感謝が「喜びて」という言葉に凝縮されています。
ビジネスマンのリアルな雪対策を詠んだ吉田かずや氏の句など、現代社会に生きる人々の息遣いが聞こえる作品ばかりです。五七五という限られた文字数のなかにドラマを凝縮させる俳句の力に、私たちは改めて深い感銘を受けずにはいられません。
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