2020年01月15日に米中両国が貿易交渉の「第1段階」に署名したものの、大豆や綿花をはじめとする農産物の国際市場では、早くもその実効性を疑問視する声が上がっています。中国による具体的な購入水準や需要の裏付けが不透明なため、市場には落胆のムードが漂っているようです。
代表的な穀物相場の指標であるシカゴ大豆先物市場における2020年01月17日の終値は、1ブッシェルあたり9.29ドルを記録しました。この価格は署名直前である2020年01月14日と同水準であり、ニューヨーク綿花先物もわずかに値下がりするなど、市場の反応は鈍い状況にあります。
今回の合意内容では、中国が2020年に125億ドル、2021年には195億ドルを2017年の実績に上乗せして米産農産品を購入することとなっています。これにより2年間で約80億ドルという過去最高額の調達が計画されているものの、市場はすでにこの規模を織り込み済みでした。
SNS上でも「これだけ高い目標を掲げながら、個別の購入計画が隠されているのは不自然だ」「本当に達成できるのか怪しい」といった、警戒感をあらわにする投稿が相次いでいます。期待されていた追加関税の撤廃が見送られたことも、失望感を強める要因となりました。
大豆を例に挙げると、これほどの大量調達を成功させるには、米国が異例のハイペースで輸出を行うか、相場を無視した高値で取引するしかありません。しかし現在の中国では、家畜の深刻な感染症である「アフリカ豚コレラ(ASF)」が猛威を振るっています。
このASFにより豚の殺処分が進んだ結果、餌となる大豆の需要そのものが激減しているのです。専門家からも、貿易摩擦前の2017年における輸入実績である3300万トンを上回ることは極めて困難である、という厳しい指摘がなされています。
さらに中国の劉鶴副首相が「輸入は市場の状況に応じて行う」と発言した報道を受け、市場関係者の間では「環境次第では約束が反故にされるのではないか」という不信感が一気に広がりました。名目ばかりの合意が、かえって市場の先行きを不透明にしています。
筆者の視点といたしましては、政治的なアピールを優先した今回の合意は、実需を無視した砂上の楼閣と言わざるを得ません。追加関税という根本的な足枷が残る限り、本当の意味での貿易正常化や安定した価格上昇を見通すのは時期尚早だと感じられます。
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