2019年6月25日、大手鉄鋼メーカーの神戸製鋼所が、主要な鉄鋼製品である薄鋼板(薄板)の価格を、7月出荷分から1トンあたり5,000円以上の大幅な引き上げに踏み切ると発表しました。今回の価格改定は、鉄の主原料である鉄鉱石(てっこうせき)や、その他の資材費、そして物流を担う輸送費が持続的に高止まりしていることを受けた、コスト負担(費用負担)の増加が最大の要因です。この値上げによって、上昇したコストを製品価格に転嫁し、同社の収益改善を図る狙いがあります。
値上げの対象となるのは、自動車メーカーなどの大口顧客との継続的な取引を指す「ひも付き」と呼ばれる出荷分に加え、街中の問屋などを通じた国内の一般流通向け、いわゆる「店売り」と呼ばれる出荷分です。対象となる薄鋼板は、熱延(ねつえん)、冷延(れいえん)、そして表面処理(ひょうめんしょり)の主要3品種です。例えば、東京地区における熱延鋼板の現在の市中価格は1トンあたり84,000円前後ですから、今回の神戸製鋼所の値上げ幅がそのまま問屋などの販売価格に反映された場合、実に6%程度もの上昇になる計算です。
鉄鋼業界においては、日本製鉄(にっぽんせいてつ)もすでに、店売り向けを中心とした薄板について、1トンあたり5,000円の値上げを打ち出しています。このように、業界トップクラスのメーカー各社が相次いで値上げを表明している背景には、原材料費の劇的な高騰があります。鉄鉱石とは、鉄の原料となる鉱石のことで、これが高炉(こうろ)という巨大な設備で熱せられ、銑鉄(せんてつ)、そして鋼鉄へと加工されます。この製鉄プロセスにおける原材料費の上昇が、製品価格に転嫁されざるを得ない状況を生み出しているのです。
しかしながら、市場では懸念の声も上がっています。現在、市中においては、海外からの輸入材(ゆにゅうざい)の増加や、一部の産業における需要の停滞を背景に、価格の基調に弱さが見受けられます。実際、東京地区では、冷延鋼板や表面処理鋼板(電気亜鉛めっき鋼板)の問屋間での取引価格が、このほど約3年ぶりに1%ほど下落しました。この表面処理鋼板とは、鋼板の表面に亜鉛などの金属を電気的にめっきし、サビにくく加工した製品で、主に自動車や家電製品に使われています。こうした市場の価格下落傾向がある中で、メーカーの値上げ表明によって商社や問屋の仕入れ価格は上昇する可能性が高いものの、最終的な市中での販売価格に、このコスト増分がどれだけスムーズに転嫁されるのかは、依然として不透明な状況だと言えるでしょう。
今回の神戸製鋼所の値上げは、コスト増を企業努力だけで吸収しきれないという、鉄鋼業界の厳しい現実を浮き彫りにしています。SNS上では「原材料費の高騰は仕方ない」「最終製品への影響が心配」といった声や、「メーカーの収益改善は必要」といった理解を示す意見など、様々な反響が見受けられます。原材料高騰という難題に直面する中で、日本の基幹産業である鉄鋼メーカーが、どのように市場の理解を得て、価格転嫁を成功させるのか、その動向に注目が集まるところです。企業としては、まずは自社の適正な利益を確保し、持続的な事業運営を実現することが最優先されるべきだと私は考えます。
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