海外セレブも魅了!「泳ぐ宝石」ニシキゴイ輸出拡大の裏に新潟の最新輸送テクノロジー【クールジャパン】

世界中の富裕層から「泳ぐ宝石」と称され、今や絶大な人気を誇る高級観賞魚のニシキゴイをご存知でしょうか。その息をのむ美しさと優雅な佇まいはもちろん、アジア圏を中心として縁起の良い魚とも信じられており、中国をはじめとする海外での需要が爆発的に高まっています。時には1匹で数百万円という驚くべき高値で取引されることもあるこの魚の安全な輸送を目指して、新潟県の養鯉業者や研究機関が最新技術の開発に全力を注いでいます。

2019年10月下旬に新潟県長岡市で開催されたニシキゴイのオークション会場は、まさに熱気そのものに包まれていました。国内外から72もの専門業者が集結し、お目当てのコイを競り落とそうと、アメリカやドイツ、中国、タイ、ベトナムなどの海外バイヤーが巨額の資金を投じて激しい火花を散らしたのです。こうした世界的な熱狂はSNSでも「コイの競り市がまるで高級アートのオークションのようだ」と大きな話題を呼んでいます。

現在、日本の養鯉業者の経営を強力に支えているのは、こうした海外勢の旺盛な購買意欲に他なりません。長岡市で生産から輸出までを一貫して手掛ける「錦鯉新潟ダイレクト」では、なんと売上高の95%を海外向けが占めているそうです。また、小千谷市にある県内最大手の「大日養鯉場」でも、アジア市場を中心に売り上げの9割以上が海外であると明かしており、今やこの産業は完全にグローバルな舞台へとシフトしていると言えます。

しかし、海外の愛好家との間で健全な取引を継続するためには、移動中の水温管理などを完璧に行い、いかに生体を傷つけずに目的地へ届けるかが最大の課題となります。そこで錦鯉新潟ダイレクトは、他社に先駆けて画期的な輸出専用コンテナを導入しました。それは発泡スチロール製造大手のトーホー工業と日本通運が共同開発した、断熱性に極めて優れた発泡スチロール製のニシキゴイ専用輸送容器です。

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常識を覆す新素材の導入と国際競争を勝ち抜くためのコスト削減

従来の輸送手法では段ボール製の資材で梱包していたため、6月から9月といった日本の酷暑の時期には容器内の水温が急激に上昇してしまうリスクがありました。これにより魚の体調に異変が生じる危険性が高く、夏場の輸出は断念せざるを得ないのが実情でした。しかし、この優れた断熱性を持つ新しい容器の登場によって内部の温度変化が最小限に抑えられ、年間を通じて安全に世界中へ出荷できる体制が整ったのです。

日本以外にもイスラエルやタイ、インドネシアといったニシキゴイの生産ライバル国が存在する中で、国際的なシェア争いに勝利するためには、輸送にかかるコストをいかに低減するかも死活問題となります。この専用容器は資材そのものの価格は段ボールより高価ですが、劇的な軽量化を実現したことで、航空運賃などを含む総輸出費用を引き下げることに成功しており、まさに一石二鳥のイノベーションと言えるでしょう。

さらに、新潟県内水面水産試験場では、限られたスペースでの輸送効率をさらに高めるための科学的なアプローチが進められています。2018年度に実施されたビニール袋内部の環境調査では、魚の健康状態に二酸化炭素の増加が大きなストレスを与えている事実が判明しました。二酸化炭素とは、生物が呼吸する際に排出するガスのことですが、これが水中に充満すると魚が酸欠や体調不良に陥ってしまうのです。

そこで2019年度は、同じ水量のままでもより多くのコイを安全に運べるように研究を重ねています。具体的には、魚に安全な麻酔を施す技術と二酸化炭素を効率よく吸収する薬剤を併用するアプローチです。これにより輸送中におけるコイの活動量を意図的にコントロールし、呼吸による二酸化炭素の発生そのものを抑制します。SNSでも「魚に麻酔をかけて運ぶなんて驚きだ」と、その先進的な取り組みに驚嘆の声が上がっています。

クールジャパン戦略を加速させる病気予防と早期診断テクノロジー

観賞魚としての芸術的な価値を損なわないために、恐ろしい感染症への対策技術も同時に磨かれています。特にコイの体表に痛々しい穴が空いてしまう「穴あき病」は非常に強い感染力を持ち、致死率も高い厄介な病気です。これまではウイルスに感染していても症状が出なければ見分ける手法がありませんでしたが、現在は発症前の段階で体表の粘液からウイルスを素早く検出する早期診断の技術開発が進められています。

日本の文化や魅力を海外に発信する政府の「クールジャパン戦略」においても、この観賞魚輸出は重要な柱に位置付けられています。2018年における鑑賞用魚全体の輸出額は、前年比18%増の43億3000万円を記録し、この10年間で2倍にまで市場が拡大しました。欧米諸国に加えて近年のアジア圏における経済成長がこの数字を力強く押し上げており、官民一体となった商機獲得への挑戦はこれからも続くでしょう。

筆者は、このニシキゴイの輸出拡大こそ、日本の伝統文化と現代の科学技術が融合した最高の成功例であると考えます。単に美しい魚を育てる職人技に甘んじることなく、過酷な輸送環境を克服するためにメーカーや研究機関が一体となってテクノロジーを進化させる姿勢こそ、日本が世界に誇るべき強みです。この熱い情熱とイノベーションがある限り、新潟のニシキゴイは世界中の人々を魅了し続けるに違いありません。

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