仲代達矢が87歳で魅せる舞台の境地!「新劇」にかけた不屈の役者魂とSNSで絶賛される理由とは?

日本を代表する名優、仲代達矢さんが87歳を迎えた今も、圧倒的な情熱で舞台に立ち続けています。「人間とは一体何なのか」という深い問いを客席に投げかけることこそが、自分の果たすべき役目だと信じているようです。劇団「無名塾」を率いる彼が挑戦しているのは、17世紀フランスの劇作家モリエールが手がけた名作喜劇「ぺてん師タルチュフ」の舞台です。

2019年10月26日に石川県七尾市の能登演劇堂で幕を開けたこの公演は、観客を大きな感動に包み込みました。ネット上でも「87歳とは思えない声量と存在感に圧倒された」「コミカルな演技の中に役者としての凄みが潜んでいる」といった称賛の声が相次いでいます。満員の客席から沸き起こる熱い拍手に応えるように、仲代さんは魅力あふれる悪役を堂々と演じきりました。

かつて黒澤明監督の映画などで冷酷な敵役を演じてきた仲代さんですが、近年はユーモアあふれる役柄で新たな魅力を開花させています。年齢を重ねたからこそ滲み出る人間味や愛嬌が、物語に心地よいリズムを生み出しているのでしょう。お芝居の枠を超えたその自然体な佇まいは、まるで長い役者人生の終盤に差し込んだ温かい光のようにも感じられます。

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近代演劇の歴史を背負う最後の巨星

仲代さんは、日本の演劇界において「新劇」の伝統を受け継ぐ数少ない表現者です。ここで言う新劇とは、明治時代の末期に始まった演劇運動を指します。伝統的な歌舞伎などとは異なり、西欧の近代的な演劇をモデルにしながら、リアルな人間の心理や社会の課題を描こうとしたのが特徴です。戦後の全盛期を経て、現代では当時の勢いを失いつつあります。

かつての仲間たちが次々とこの世を去る中、仲代さんは孤高の闘いを続けています。2017年には体調を補うために酸素吸入器を使いながらも反戦劇の主演を務めあげ、周囲を驚かせました。本を出版した際には「観客の心の一歩奥へと踏み込めるのが新劇の強み」と語っており、映像作品で有名になってからも、1年の半分を舞台に捧げる姿勢を貫いています。

演劇で必要とされる高度な発声や身体の動かし方を教えるため、1975年には私塾を開設しました。授業料を取らずに後進を育てる私塾の運営費を補うため、大きな借金を抱えながらも数年前についに完済したそうです。才能や運に甘んじることなく、「ただひたすらに努力を積み重ねること」こそが、長く第一線で活躍し続けられる最大の秘訣だと彼は考えています。

時代を風刺する笑いと師へのオマージュ

今回選んだ演目は、嘘やごまかしが蔓延する現代社会をユーモアの力で風刺したいという、強い反骨精神から決めたものだそうです。さらにこの作品には、仲代さんが生涯の師と仰ぐ演出家、千田是也さんへの深いリスペクトも込められています。高校生の頃に師の舞台を見て役者の道を志した仲代さんは、若き日にも同じ演目で師と共演していました。

かつて日本の新劇は、日本人が金髪のウィッグをつけたり付け鼻をしたりして西洋人を演じていたことから、皮肉を込めて「赤毛もの」と揶揄された時代もありました。1960年代の後半には、若き日の蜷川幸雄さんら新しい世代の演劇人から、その形式的な古さを厳しく批判されることもあったのが歴史的な事実です。

しかし、現在の無名塾が届ける舞台には、そうした批判を軽々と乗り越える大らかさと、権力に立ち向かうしたたかな知恵が息づいています。人生の円熟期をパワフルに突き進む仲代さんは、2020年の秋に太宰治の「人間失格」を朗読劇にして挑戦する予定です。彼のあくなき探求心と挑戦は、これからも多くの人々の心を揺さぶり続けるでしょう。

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