宮城県仙台市に拠点を置き、地下水探査や飲食事業を幅広く手掛ける「いちごホールディングス」が、タイの首都バンコクで新たな一歩を踏み出します。同社は独自の技術を投入した高性能な浄水装置の販売を開始し、現地の飲食店や高層マンションをメインターゲットに据える方針を固めました。2019年07月11日、この意欲的なプロジェクトが本格始動したことで、現地の水事情にどのような変化が生まれるのか、大きな期待が寄せられているところです。
今回の進出において、初年度の販売目標は1,000台という強気な数字が掲げられています。提供されるのは、水道管に直接接続して使用する「水道直結型」の装置で、販売価格は日本円で約5万5,000円を予定しているとのことです。この装置の最大の特徴は、特殊な「膜」を用いて有害な大腸菌やウイルス、残留塩素を徹底的に除去する点にあります。電気を使用しない設計のため、環境負荷が少なく設置場所を選ばない点も、東南アジアのインフラ環境において大きな強みとなるでしょう。
そもそも、なぜ仙台の企業がタイで水ビジネスを展開するのでしょうか。その背景には、グループ傘下の「ストロベリーコーンズ」が2018年08月にバンコクへ進出した経験が深く関わっています。宅配ピザチェーンとして知られる同社が現地でテイクアウト専門店を運営する中で、現地の消費者が「食の安全性」に対して極めて敏感であるという実態が浮き彫りになりました。水は料理の味を左右するだけでなく、健康に直結する重要な要素として捉えられているのです。
SNS上では、現地の日本人駐在員や健康意識の高いタイ人層から「自宅の水道水がより安全に使えるようになるのは嬉しい」「日本企業の技術力に期待したい」といったポジティブな反応が相次いでいます。タイでは近年、農薬を抑えた有機野菜がブームになるなど、安心・安全への投資を惜しまない層が増加傾向にあります。こうした市場の変化を敏感に察知し、あえて安価で高品質なデバイスを投入する戦略は、まさに時代に即した賢明な判断だと言えるのではないでしょうか。
ここで、専門的な「ろ過膜」の仕組みについて少し触れておきましょう。浄水装置の心臓部にあたるこの膜は、目に見えない微細な穴が空いたフィルターのようなものです。水分子は通しますが、それよりもサイズが大きい細菌や有害物質を物理的にブロックします。今回の装置は、電気を一切使わずに水圧だけでこの工程を実現している点が非常に画期的です。メンテナンスの手軽さとコストパフォーマンスを両立させた、いわば日本の「職人技」が詰まった製品なのです。
水関連事業への参入背景とグローバル展開への展望
いちごホールディングスが水ビジネスに参入したのは、遡ること2008年のことでした。当時は世界的な雨不足や深刻な干ばつの影響を受け、飲食事業の原材料価格が高騰するという苦い経験をしています。気候変動がビジネスに与えるリスクを肌で感じた同社は、自ら「水」をコントロールする技術を持つことで、事業の多角化と安定化を図ってきました。今回のバンコク進出は、10年以上にわたって蓄積されたノウハウを世界に問う試金石でもあります。
個人的な見解を述べさせていただくと、飲食チェーンが「水」そのものを売るという逆転の発想は、非常に強固なビジネスモデルだと感じます。自らの店舗で品質を証明できるため、顧客への説得力が他社とは一線を画すからです。バンコクを足がかりに、今後はアジア全域へこの「安全な水」のサイクルが広がっていくことでしょう。仙台から世界へ、食と水の安全を守る挑戦はまだ始まったばかりですが、その未来は非常に明るいものであると確信しています。
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