観光地を歩けば、1回100円のクレーンゲームに夢中になる外国人観光客の姿がいたるところで見られます。私たちが子どもの頃から当たり前のように親しんできた「1プレイ100円」という料金設定。実は、これまでに消費税率が3回も引き上げられたにもかかわらず、ずっと変わっていません。一体なぜこの価格を維持できるのでしょうか。その裏側には、ゲームセンター業界が抱える切実な事情と、ファンを大切にしたいという強い思いが隠されているのです。
全国に店舗を展開する大手アミューズメント企業「タイトー」によると、なんと増税分のコストはすべてお店側が負担しているそうです。他の運営費を極限まで削ることで、なんとか利益へのダメージを抑えているというから驚きを隠せません。過去の2009年には、東京都内で1回120円に値上げする実験を行ったこともありました。しかし、結果は客足が急激に遠のいてしまい、本格的な導入を見送らざるを得なかったという苦い経緯があります。
やはり、お財布から小銭を1枚取り出すだけで遊べる「ワンコインの手軽さ」は、ユーザーにとって最大の魅力でしょう。店側もその心理を熟知しているからこそ、値上げには極めて慎重にならざるを得ないのです。SNS上でもこの話題は定期的に注目を集めており、「100円玉で遊べる文化を維持してくれて感謝しかない」「企業の企業努力が凄すぎる」といった、店舗を応援する好意的な声が数多く寄せられています。
キャッシュレス決済が変えるアミューズメント業界の未来
長年続いたワンコインの文化ですが、電子マネーやスマホ決済の普及によって風向きが変わりつつあります。タイトーでは、2014年の消費増税の翌年にあたる2015年以降、全国の約半数にのぼる82店舗で交通系ICカードなどによる決済システムを導入しました。さらに、2019年06月からはQRコード決済の導入に向け、東京都内で実証実験を進めています。こうした新しい波は、利便性を高める一方で、価格設定の自由度を広げる契機にもなるでしょう。
キャッシュレス化が進めば、1プレイ110円といった1円単位での細かな柔軟な料金設定が可能になります。これなら、お店も増税分を適正に価格転嫁できるようになり、無理なコスト削減に頭を悩ませる必要もなくなります。私個人としても、お気に入りのゲームセンターが存続してくれるのであれば、そうした数十円の値上げは喜んで受け入れたいと考えます。むしろ、現金の管理コストが減ることで、お店がより健全に経営を続けられるメリットの方が大きいはずです。
しかし、こうした時代の変化にすべての店舗が追いつけるわけではありません。古き良きゲーム機が並ぶ街の小さなゲームセンターでは、今でも現金払いが主流のままです。ある店舗の経営者は、システムの導入には莫大な費用がかかるうえに、最新のゲーム機自体が高額で導入すらままならないと、厳しい現状を吐露しています。キャッシュレスの波は、資金力のある大手と、取り残されがちな個人店との格差を広げる要因にもなっています。
日本アミューズメント産業協会のデータによると、2008年度に全国で約8000店あったゲームセンターは、小規模店を中心に減少が続いています。2018年度時点では4100店と、わずか10年ほどでほぼ半減してしまいました。大好きな遊び場が消えてしまうのは本当に寂しいことです。お店の努力に甘え続けるのではなく、時には適正な値上げを受け入れ、キャッシュレスなどの新技術を応援していく姿勢が、これからのファンには求められているのではないでしょうか。
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