2019年08月22日、日本の蓄電池業界に激震が走るニュースが飛び込んできました。バッテリーの老舗であるジーエス・ユアサコーポレーションが、2020年03月期から始まる3カ年計画において、ハイブリッド車(HV)向けのリチウムイオン電池に資源を集中させる方針を固めたのです。
世界中の自動車メーカーがこぞって電気自動車(EV)へのシフトを宣言するなか、この決断は一見すると時代の流れに逆行しているようにも映るかもしれません。しかし、その裏側には、冷静かつ極めて現実的な市場分析と、日本企業の生き残りをかけた緻密な計算が隠されているのではないでしょうか。
ここで、今回の主役となる「リチウムイオン電池」について簡単に解説しておきましょう。これは、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで充放電を行う二次電池のことです。小型で大きな電力を蓄えられるため、スマートフォンから車載用まで幅広く活用されていますが、車種によって求められる性能が微妙に異なります。
あえてEV市場の真っ向勝負を避ける賢明な選択
なぜ同社は、花形とも言えるEV向けではなく、あえてHV向けを選んだのでしょうか。そこには、現在のEVが抱えるインフラ整備の遅れや車両コストの高さという壁があります。2019年08月22日時点の市場環境では、EVの本格普及にはまだ相応の時間が必要だとジーエス・ユアサは読み切ったようです。
対照的に、HV市場は2030年代の前半にかけて着実な需要の伸びが期待されています。特に日本国内の自動車メーカーはHVに強みを持っており、同社が長年培ってきた高い技術力やノウハウを直接活かせる場でもあります。確実に利益を出しつつ、シェアを盤石にするための「選択と集中」なのです。
また、強大な資本力を背景に巨額投資を繰り返す中国勢との消耗戦を回避するという側面も無視できません。電池の容量が勝負を決めるEV用電池は、まさに規模の経済が支配する世界です。そこで無理な競争に身を投じるよりも、品質と信頼性が問われるHV分野で勝機を見出す戦略は、非常に合理的だと言えるでしょう。
SNS上ではこのニュースに対し、「現実的な判断で安心した」という支持の声がある一方で、「将来的にEVで世界に引き離されないか心配だ」という懸念も散見されます。ファンの間でも、この守りと攻めが入り混じった決断は、今後の日本産業の行く末を占う試金石として注目を集めているのです。
編集者の眼:これは「後退」ではなく「次なる飛躍への伏線」である
私自身の見解を述べさせていただくなら、今回のジーエス・ユアサの決断は、決してEVへの敗北宣言などではありません。むしろ、自分たちが最も輝ける土俵を死守し、確実にキャッシュを稼ぎ出すための「賢い生存戦略」だと評価しています。派手なトレンドに流されない姿勢こそ、今求められているのではないでしょうか。
2019年08月22日現在、自動車業界は100年に1度の大変革期にあります。全ての弾をEVに注ぎ込むリスクを考えれば、まずは得意のHVで足場を固め、次世代の技術開発に向けた体力を養う時間は必要不可欠です。この3年間の集中投資が、将来の電池市場で大きな意味を持つ日が来るはずだと確信しています。
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