北欧スウェーデンの幸せな習慣「フィーカ」とは?コーヒータイムが生む豊かな暮らしとルシア祭の魅力

北欧の洗練されたライフスタイルは、常に私たちの心を惹きつけます。なかでもスウェーデン人の暮らしに深く根ざしているのが、「フィーカ(Fika)」と呼ばれるコーヒータイムです。これは単に喉を潤すための休憩ではありません。仕事や家事の手を少しだけ休めて、同僚や友人、家族との心地よい会話を堪能する特別なひとときを指します。SNSでも「日常に余白を作る素敵な文化」「日本でも取り入れたい」と大きな反響を呼んでいるのをご存知でしょうか。今回は、そんな心温まる北欧の知恵をご紹介します。

2020年1月12日、東京都港区にあるスウェーデン大使公邸を訪ねました。内装は壁の突き板に至るまで本国から運ばれた見事な北欧風で、まるで現地に迷い込んだかのような空間です。着任されたペールエリック・ヘーグべリ駐日大使とアンナ夫人は、シックなソファで微笑みながら、この魅力的な習慣について教えてくださいました。現地では職場でもプライベートでも、驚くほど頻繁にこの時間が設けられているそうです。

例えば大使館では、朝のフレックスタイム(労働者が始業・終業時刻を自主的に決定できる制度)で出勤した職員が、午前9時30分になると自然と集まってコーヒーを楽しみます。さらに毎週金曜日の午後3時には、職員全員が集合する大がかりな時間が待っています。大使は「大切なのは、他の人と過ごす時間そのものです。業務を置いて雑談するうちに、素晴らしいビジネスのアイデアがひらめくことも多いのですよ」と語ってくださいました。

英国のアフタヌーンティーのように時間帯が決まっていないのも特徴です。スウェーデンの人々は、計画に縛られずその時々の状況に合わせて柔軟に行動する国民性を持っています。そのため、街で友人と偶然出会った瞬間に「今からフィーカしよう」と決まることも日常茶飯事なのだそうです。忙しい日々に追われる私たち現代人にとって、この柔軟で見事なリフレッシュ方法と思いきりの良さは、ぜひ見習いたい姿勢だと感じさせられます。

この文化が定着した背景には、冬の日照時間が短い北欧で「眠気覚ましにコーヒーが最適だった」という説や、農作業の効率化を目指してみんなで同時に休んだ名残という説があります。実際の消費量も凄まじく、国際コーヒー機関の調査ではフィンランドに次いで世界第2位を誇るほどです。取材は昼過ぎでしたが、大使はすでに3杯、夫人も2杯を堪能されていました。1909年生まれの大使の祖父も、自らお菓子を焼いて1日2回の時間を欠かさなかったそうです。

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光を待つ冬の特別なイベント「ルシア祭」と伝統の焼き菓子

12月13日に行われる「ルシア祭」の後は、さらに特別な時間が訪れます。これはイタリアの聖人伝説と北欧の伝承が融合したお祭りで、旧暦の冬至に光を祝う大切な行事です。早朝の暗闇の中、頭にろうそくを飾って光をもたらす「ルシア」役の子供を先頭に、合唱団が美しい歌声を響かせます。音楽教師である夫人によると、子供たちは1ヶ月以上も前から練習を重ねるそうです。人々は合唱に耳を傾けた後、仲間と共にとっておきの時間を過ごします。

大使館のルシア祭では、専属シェフのヨハン・アールステットさんが「ルッセカット(ルシアの猫)」というサフラン入りの愛らしいパンを焼き上げました。サフランとは、独特のエキゾチックな香りと鮮やかな黄色が特徴の世界で最も高価とされるスパイスです。このパンは、サフランの香りを移した牛乳やバターを混ぜた生地を発酵させ、230度の高温でわずか3分だけ素早く焼き上げます。こうすることで、硬くならずふんわりと柔らかい食感に仕上がるのです。

この特別なひとときには、コーヒーだけでなく「グレッグ」と呼ばれるスウェーデン風のホットワインも欠かせません。ウオッカにシナモンやカルダモン、丁字といったスパイスを1週間ほどじっくり漬け込み、それを赤ワインに加えて温めるのが本場のレシピです。カップにレーズンや刻んだ生のアーモンドを浮かべ、スプーンですくいながら温かいお酒を味わうスタイルは、寒い季節の体を芯から温めてくれる極上の知恵と言えるでしょう。

大使夫妻は、これまで赴任したナミビアや南アフリカ、そして前任地のベトナムでもこの伝統を周囲に振る舞い、文化の架け橋となってきました。ベトナムではなんと800人以上のお客を招いて盛大にお祝いしたそうです。「来年は日本の大使館でも、もっと盛大にルシア祭をお祝いしたいですね」と大使は嬉しそうに展望を語ってくださいました。お互いを思いやる北欧の温かい習慣が、これから日本でもさらに身近になることを心から願っています。

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