2019年6月25日に開催された日産自動車の定時株主総会は、前年を大幅に上回る約3時間22分という長丁場となり、株主の関心の高さを物語りました。前年度比57%の大幅な最終減益という厳しい2018年度の決算を受け、経営トップである西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)に対し、業績の改善策と、筆頭株主である仏ルノーとの今後の関係について、例年の約3倍にあたる22人の株主から質問が集中したのです。
西川社長は、株主からの厳しい声に対し、収益を回復させる具体的な目標期間として「長くて3年、できれば2年」という明確な数値的なゴールを提示しました。これは、経営の立て直しに向けた強い決意の表れと言えるでしょう。また、収益改善のためには「不採算事業はより厳しく選別する」という、痛みを伴う可能性のある構造改革に着手する姿勢を強調しています。
この一連の改善策の詳細は、7月末に公表される予定です。焦点は、「余剰生産能力を抱える新興国向けの小型車工場」の見直しと、「最大の収益源である北米市場での販売回復」に置かれています。過去のカルロス・ゴーン体制下で進められた、無理な販売台数の拡大に頼る経営手法を反省し、「持続可能な成長路線」への転換を目指す方針を打ち出しています。
具体的なテコ入れ策としては、2019年度下期から米国で主力車種である多目的スポーツ車(SUV)などを順次刷新投入するほか、切り札として「四輪駆動の電動車」という、技術力を活かした新機軸の投入も予定されています。これは単に数を売るのではなく、「お客様に価値を認めていただき、ご購入いただける状態」を作り出すという、地道かつ本質的な経営への回帰を意味していると私は考えます。西川社長は「数字で結果を出すことが、すべての疑問に対する回答になる」と述べ、今後の成果に自信を見せています。
日仏連合の将来像は? ルノーとの関係再構築が最大の難題
今回の株主総会で最も注目を集めたもう一つのテーマは、大株主ルノーとの今後の関係性です。西川社長は、ルノーとの経営統合や資本関係の見直しといった棚上げになっていた重要な課題について、この時点では明確な将来像を示すことができませんでした。しかし、今後は「今後の日仏連合の安定に最適な形」を念頭に、議論を進めていく姿勢を示し、当面は性急な結論を出さない方針です。
ルノー側のトップであるジャンドミニク・スナール会長も、今回の総会に合わせて日本入りしており、「攻撃的に行うことは考えていない」と述べ、日産との融和的な路線を改めて表明しました。しかし、根本的なところで日産とルノーの間には、大きな方向性の違いが存在しています。ルノーはアライアンス(日仏連合)の「一体化」を戦略の根幹に据えているのに対し、日産は「経営の独立性」を強く重視しているからです。
スナール会長は、日産の会長人事について「職を求める権利はあった」、そして経営統合についても「何カ月も前から話し合いが行われていた」と発言しており、筆頭株主としての日産への関与、すなわちコーポレートガバナンス(企業統治)を強化する姿勢を崩していません。この発言からは、ルノー側が大株主としての権利を行使することに躊躇がないことが伺え、今後の両社の交渉が難航する可能性を示唆していると言えるでしょう。
SNS上では、この株主総会の報道に対し、「西川社長が結果を出すことに期待したい」「ルノーとの主導権争いはどうなるのか不安だ」といった期待と懸念が入り混じる反響が見受けられました。この総会は、日産が「脱・ゴーン路線」へと明確な針路を定めた「非常に大きな節目」となりましたが、ルノーとの関係性の再構築という、困難な課題は新体制に引き継がれました。2019年6月25日に発足した日産の新体制にとって、ルノーとの対等かつ安定的な関係をどのように築き直すのかが、今後最大の試練となるでしょう。
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