人生のセカンドライフを安心して過ごすための住まい選びとして、多くの人が選択肢に入れる有料老人ホーム。しかし、その契約を巡って今、見過ごせない深刻な問題が浮き彫りになっています。多くの施設では、将来の家賃をあらかじめ一括で支払う「前払い金(入居一時金)」という仕組みを導入しているのをご存知でしょうか。最初にまとまった資金を収めることで、毎月の生活費を低く抑えられる魅力的な制度ですが、実は2000年代に入ったころから、このお金が戻ってこないというトラブルが全国で相次いでいるのです。
金額が時には数千万円という巨額にのぼることもあるため、施設が万が一倒産してしまった場合の衝撃は計り知れません。大切な老後資金が予期せぬ形で失われ、入居者だけでなくその家族までもが路頭に迷ってしまうという悲劇が後を絶たないのが現状です。この事態を受けてSNS上でも「親の預金をすべて預けるのはリスクが高すぎる」「もしもの時に誰も守ってくれないなんて怖すぎる」といった、将来への強い不安や憤りの声が数多く寄せられており、社会的な関心が急速に高まっています。
義務化が進む保全制度と残された高いハードル
こうした危機的な状況を改善するため、国もようやく重い腰を上げました。国は2006年4月1日に老人福祉法を改正し、それ以降に新しく開設された施設に対しては、倒産などの不測の事態が起きた際に最大500万円まで前払い金を返還する保全制度への加入を義務付けたのです。さらに、2021年4月1日からはすべての施設に対してこの義務化の網を広げる計画が進められています。一見すると救済の手が広がっているように思えますが、実は現場の対策はまだまだ追いついていないのが実態と言わざるを得ません。
厚生労働省が2018年6月30日時点で実施した調査によると、すでに加入義務があるはずの1440施設のうち、なんと4パーセントに相当する59施設が未加入のまま放置されていることが判明しました。法律の網の目をすり抜けている施設が依然として存在しているという事実は、驚きを禁じ得ません。また、運よく全国有料老人ホーム協会などが用意する保証制度に加入している施設だったとしても、実際に現金が戻ってくるための条件が極めて厳しいという、もう一つの大きな壁が立ちはだかっているのです。
制度改正へ動き出した国とこれからの住まい選び
現在の仕組みでは、保証金が支払われるのは「入居者が全員退去せざるを得なくなった場合」といった極端なケースに限られています。もし他の事業者が運営を引き継いで入居が継続できるような状況になると、前払い金が実質的に戻ってこない事態が多発しているのです。せっかくのセーフティネットが機能していない現状は早急に解決すべき課題であり、国や同協会は2020年度中の制度改正を視野に入れ、救済対象を広げるための要件緩和に向けた具体的な検討をスタートさせました。
編集部の視点としては、高齢化社会が加速する中で、高齢者とその家族の財産を守る仕組み作りは一刻を争う最優先事項だと考えます。素晴らしいサービスを謳う施設であっても、経営状態の透明性や保全制度への加入有無を私たち消費者が厳しく見極める目が欠かせません。国には単なる義務化に留まらず、実効性のある強力な監視と、誰もが納得できる迅速な救済制度の確立を強く望みます。家族の笑顔と安心を守るためにも、制度の動向から今後も目が離せそうにありません。
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