2019年12月13日現在、私たちの将来を左右する「老後資金」への関心がかつてないほど高まっています。多くの国民が抱く「公的年金だけで生活できるのか」という不安は、決して取り越し苦労ではありません。厚生労働省が2017年に実施した調査によれば、65歳以上の高齢者における収入のうち、年金が占める割合は男性で76%、女性では87%に達しています。この数字は、裏を返せば年金以外の収入源や蓄えがなければ、日常生活を維持することさえ困難であることを物語っているでしょう。
SNS上では「2000万円なんて貯められるわけがない」「年金だけで暮らせる仕組みを作ってほしい」といった悲痛な叫びや、将来への強い不信感が渦巻いています。金融庁の報告書がきっかけとなった「老後2000万円不足」というフレーズは、瞬く間に日本中を震撼させました。この試算は、高齢夫婦の無職世帯において、毎月約5万円の赤字が発生するという現実的なモデルに基づいています。この不足分を補うためには、20年で約1300万円、30年であれば約2000万円の貯蓄を取り崩す必要があるのです。
平均値に隠された格差の実態と迫りくる危機
2018年の総務省の調査では、2人以上の高齢世帯における平均貯蓄額は2280万円と発表されました。一見すると、多くの世帯が準備を終えているように思えるかもしれません。しかし、実態は決して楽観視できるものではないでしょう。貯蓄額が2000万円を超えている世帯は全体の4割に過ぎず、一方で4分の1近い23%の世帯は貯蓄が500万円以下という厳しい状況に置かれています。平均値という言葉に惑わされず、手元資金が不足する世帯が確実に存在することを認識しなければなりません。
ここで言う「資産形成」とは、将来の生活のために計画的にお金を蓄え、運用することを指します。若い世代であれば時間を味方につけた運用が王道ですが、定年退職が目前に迫った方々にとっては、これは極めて切実な難問と言えます。私個人の見解としては、現在の日本政府は国民に対して「自助努力」を求めるばかりで、具体的な道筋を提示する姿勢がまだ不十分だと感じます。老後の貧困は個人の責任として片付けられる問題ではなく、社会全体で取り組むべき喫緊の課題ではないでしょうか。
米国の先行事例に学ぶ国家主導の資産形成支援
この難問を解決するヒントは、実は米国にあります。アメリカでは労働省が主導し、国民の老後資産を増やすためにあらゆる施策を講じてきました。過去には大統領自らが出席する「退職貯蓄ナショナル・サミット」を3回も開催しており、老後資金の確保を国家の重要プロジェクトとして位置づけているのです。その呼びかけは非常に具体的で、専門用語を避け、図表を多用した平易なガイドブックを配布するなど、情報の格差を埋める努力が徹底されています。
さらに、ヒスパニック系の国民に向けてスペイン語版の資料を用意するなど、多様な層への目配りも欠かしません。引退が近い世代に対しても「今からでも決して遅くはない、収入の20%を積み立てよう」と力強く鼓舞しています。こうした国を挙げた熱量こそ、今の日本に最も欠けている要素かもしれません。ただ不安を煽るのではなく、誰もが具体的なアクションを起こせるような支援体制の構築が、2019年現在の日本政府に強く求められています。
今後、我が国において潜在的な貧困高齢世帯が増加することは避けられない懸念材料です。しかし、時間をかけて着実に資産形成を促す仕組みを整えれば、事態の改善は不可能ではありません。この難事業を成し遂げられるかどうかは、ひとえに政府がこの問題をどれほど深刻に捉え、国民に寄り添った政策を打ち出せるかにかかっているでしょう。私たち国民もまた、自らの未来を守るために、正しい知識を持って行動を開始すべき時が来ているのです。
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