2019年10月の台風19号、そしてその後に続く記録的な豪雨は、私たちの平穏な日常を容赦なく奪い去っていきました。自然が振るう圧倒的な猛威の前に、人間という存在がいかに無力であるかを痛感させられた方も多いでしょう。しかし、そんな暗いニュースが続くなか、あるテレビ番組で紹介された飲食店店主の言葉が、日本中の視聴者の心に一筋の光を灯しています。
その店主は、店舗を新しく改装した直後に浸水被害に見舞われるという、言葉を失うほど過酷な状況に置かれていました。泥にまみれた店内で、彼は「営業再開までには、おそらく半年は必要になるだろう」と静かに語りました。目の前の惨状に打ちひしがれるのではなく、復興に向けた具体的な時間軸を見据えるその姿に、SNS上では「自分も前を向かなきゃ」「人間の強さを教えられた」といった感動の輪が広がっています。
大きな困難に直面した際、私たちはどうしても「もうおしまいだ」「どうすることもできない」と悲観的な思考に支配されがちです。専門的な視点から言えば、これは「全か無か」の思考に陥っている状態かもしれません。実は、最悪の事態を想定すること自体は、危機管理の面で見れば決して悪いことではないのです。問題なのは、まだ決まっていない未来を「不可能」と断定して、自ら足を止めてしまうことにあります。
ここで鍵となるのが、大野裕氏も提唱する「認知行動療法」という考え方です。これは、自分の「物事の捉え方(認知)」に働きかけて、心のストレスを軽くする心理療法の一種です。例えば「どうすることもできないのではないか」という不安は、あくまで一つの推測に過ぎません。その推測を「絶対に無理だ」という事実にすり替えてしまうと、私たちが本来持っているはずの工夫や知恵を絞り出す意欲が消えてしまうのです。
2019年11月18日の時点で、被災地では今もなお厳しい戦いが続いています。しかし、あの日店主が示したように、時間はかかっても一歩ずつ進む道は必ず残されています。自らの創意工夫だけでなく、周囲の温かい支援を借りることも大切な選択肢でしょう。可能性を自分で否定せず、未来への選択肢を少しずつ広げていくことこそが、本当の意味での「心の復旧」に繋がるのではないでしょうか。
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