ベトナムのコンビニ進出に高い壁!日系大手のセブンやファミマが苦戦する驚きの理由とは?

東南アジアの中でも、新たな巨大消費地として世界中から熱い視線を浴びているベトナム。現在のベトナムは、まさに日本の高度経済成長期のような活気に満ちあふれています。「1億人総中流社会」とも呼ばれる巨大な市場を開拓しようと、2019年12月にはユニクロがホーチミンへ進出し、さらに2020年春には首都ハノイへの出店や良品計画の初上陸も控えるなど、日系小売業の勢いはとどまることを知りません。しかし、その先駆けとしていち早く現地へ飛び込んだ日本のコンビニ各社は、今まさに想像を超える大苦戦を強いられているのです。

実は、このベトナム市場の厳しさを物語る衝撃的なニュースが飛び込んできました。2019年12月3日、不動産を中核とするベトナム最大の複合企業であるビングループが、現地の大手食品メーカーであるマサングループと小売り事業を統合すると発表したのです。ビンは国内に約2600店舗を展開する、まさに小売業界の絶対的なガリバー企業でした。その巨大な資本力を持ってしても店舗網を維持できず、実質的な白旗を上げる形で小売りからの撤退を決断したニュースは、日系の小売関係者の間にも大きな激震を走らせています。

ネット上のSNSなどでもこの撤退劇は話題となっており、「あのビンでさえダメなのか」「ベトナムのコンビニ事情は想像以上にシビアだ」といった驚きの声が上がっています。ベトナムは年間で約7%という驚異的な経済成長を維持しており、1人当たりのGDP(国内総生産:国の中で新しく生み出されたモノやサービスの合計価値のこと)は、節目となる3000ドルを突破して現在は3400ドル程度にまで急成長しています。それにもかかわらず、なぜコンビニはこれほどの消耗戦に巻き込まれてしまっているのでしょうか。

スポンサーリンク

立ちはだかる「露店文化」と高騰する賃料の壁

現在ベトナムには、2011年に進出したミニストップをはじめ、ファミリーマートや日本最大手のセブン―イレブンなどがドミナント戦略(特定の地域へ集中的に出店して知名度や物流効率を高める手法)を展開しています。ホーチミン中心部では、わずか100メートルの範囲に日系コンビニがひしめき合う激戦区もあるほどです。店内には日本風のおにぎりや、おなじみのお菓子が並び、2階の飲食スペースでは若者たちが楽しそうに過ごしています。一見すると大盛況のようですが、内情はどこが先に脱落するかの我慢比べ状態なのです。

その最大の障壁となっているのが、現地に深く根付いている魅力的な「露店文化」の存在です。ハノイの朝のマーケットでは、出勤前の女性たちが新鮮で安い食材を買い求めて活気に満ちています。さらに街角の「路上喫茶店」では、プラスチックの小さな椅子に座り、1杯わずか3000ドン(約15円)のお茶を片手に談笑する姿が日常風景となっています。急激な経済成長に対して、人々の生活スタイルはまだ追いついていません。わざわざ何倍ものお金を払って、エアコンの効いた店内でコーヒーを飲む必要性を感じない人が圧倒的に多いのです。

さらに、追い打ちをかけるのが「土地代の高騰」です。ハノイやホーチミンなどの一等地は賃料が非常に高く、売上に対して採算がまったく合わない状況が続いています。実際にミニストップは2019年1〜9月期で5億円の営業赤字を計上しており、セブン―イレブンも「3年で100店舗」という当初の目標達成が極めて困難な情勢です。日本の優れたオペレーションやサービスをそのまま持ち込んでも、現地の高すぎる家賃と根強い生活習慣という二つの重荷が、利益への道を険しく阻んでいるのが現状と言えるでしょう。

中国市場の成功に学ぶ「1万ドルの壁」とこれからの可能性

ベトナムが苦しむ一方で、お隣の中国ではコンビニ市場が2桁成長を続け、店舗数はすでに12万店を突破するという大躍進を遂げています。実は中国でも1990年代の進出当初は、安さを重視する消費者の感覚に合わず、定価販売のコンビニは長く冬の時代を過ごしていました。しかし、2010年代に入って大都市の1人当たりGDPが「1万ドル」を超えたことで風向きがガラリと変わったのです。生活に余裕ができた中間層、特に若者たちが「高くても、欲しいものを今すぐ買いたい」というタイパ重視の消費行動へ変化していきました。

この中国の歴史を振り返ると、ベトナムのコンビニの未来が決して暗いわけではないことが分かります。現在のホーチミンでは、1人当たりのGDPがすでに8000ドル程度に達しており、市場が爆発的に変化すると言われる「1万ドルの壁」のすぐ手前まで迫っているのです。高齢化が進む中国とは異なり、ベトナムの平均年齢は30歳前後と非常に若く、新しい文化を吸収するエネルギーに満ちあふれています。今はまだ文化の過渡期であり、利益を出すための基盤を整える「我慢の時」なのだと感じます。

私自身の視点としては、日系コンビニがベトナムで成功するためには、単に日本流を押し付けるだけでなく、現地の路上文化をいかに取り込むかが鍵になると考えています。例えば、店先でベトナム風のローカルフードを実演販売するなど、親しみやすさと利便性を融合させた新しい店舗モデルが必要不可欠ではないでしょうか。人々の所得が上がり、ライフスタイルが変化したその時、この過酷な消耗戦を生き抜いた企業だけが、ベトナムという巨大な楽園で真の勝者として大きな果実を手にすることができるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました