スペインのマドリードで開催されている第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議、通称「COP25」は、2019年12月14日に会期を延長して最終局面の協議へと突入しました。2020年からはいよいよ、地球温暖化対策の国際的な羅針盤となる「パリ協定」が本格的に動き出します。今回の会議における最大の焦点は、世界各国が温室効果ガスの排出削減目標をどこまで高く設定し、一致団結できるかという点に集まっています。
SNS上では、若き環境活動家グレタ・トゥンベリさんの発信に触発された世代を中心に、「もっと具体的な行動を」「政治家は未来を見てほしい」といった切実な声が溢れています。会議の結果次第では、私たちのライフスタイルやビジネスの在り方が根底から覆る可能性もあるため、世界中の視線がこのスペインの地に注がれているのです。しかし、合意への道のりは決して平坦ではなく、各国の利害が複雑に絡み合う難しい調整が続いています。
立ちはだかる「排出削減目標」と「排出量取引」の壁
現在、交渉のテーブルでは「削減目標の引き上げ」と「排出量取引のルール作り」という二つの難題が議論されています。排出量取引とは、自国で削減しきれない分を他国での削減分で補う、いわば「環境価値の売買」のような仕組みのことです。この配分ルールを巡り、目標の深掘りを求める欧州連合(EU)や島しょ国と、慎重な姿勢を崩さない日本や米国、オーストラリアといった国々の間で、激しい言葉の応酬が繰り広げられています。
さらに中国やインドなどの途上国グループは、「そもそも歴史的に多くのガスを排出してきた先進国こそが、より重い責任を負うべきだ」と主張しています。パリ協定が掲げる「気温上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に抑える」という目標を達成するには、現状の各国の公約では全く足りません。国連環境計画の警告によれば、今のままでは3.2度も上昇してしまうという衝撃的な予測も出ており、危機感は募るばかりです。
主要排出国の消極的な姿勢と、現実味を欠く具体策
私が危惧しているのは、世界全体の排出量の約4割を占める米国と中国が、必ずしも大幅な削減に前向きではないという現実です。特に米国はトランプ政権下でパリ協定からの離脱を表明しており、この巨大なリーダーの欠如が他国の意欲を削ぐ「負の連鎖」を招きかねません。主要排出国が本気で舵を切らなければ、どんなに素晴らしい合意文書を作成したとしても、それは画餅に帰してしまうのではないでしょうか。
また、目標だけが独り歩きし、それを達成するための具体的な道筋が見えないことも大きな問題です。例えば自動車業界では、すべての車両を電気自動車(EV)へ転換することが求められていますが、インフラ整備は欧州でさえ追いついていません。さらに、鉄鋼やセメントといった素材産業において、石炭や石油の代わりに水素を使う技術はまだ研究段階です。理想を追うだけでなく、官民がどう資金を融通し合い、技術革新を加速させるかという泥臭い議論こそが今、求められています。
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