世界を震撼させた日産自動車のカルロス・ゴーン元会長による保釈中の海外逃亡劇が、新たな局面を迎えています。レバノンのセルハン暫定法相は2020年01月03日、日本経済新聞の取材に対し、同国の検察当局が近く元会長への事情聴取に乗り出す方針を明らかにしました。世界がその行方に注目するなか、現地当局がどのようなアクションを起こすのか、その第一歩が刻まれようとしています。
今回の聴取は、国際刑事警察機構(ICPO)から届いた「国際逮捕手配書」を受けた手続きの一環です。ICPOとは、世界中の警察が協力して犯罪捜査を行う国際組織で、この手配書はいわば「世界指名手配」の通知に相当します。2020年01月02日に東京支部から届いた要請に対し、レバノン側は内容の精査を進めた上で、逃走に至った詳細な経緯を本人から直接聞き取る予定とのことです。
SNS上では「ついに法の裁きが下るのか」と期待する声がある一方で、「単なる形式的な手続きに終わるのではないか」という冷ややかな視線も目立ちます。特に、レバノン政府が一貫して身柄の引き渡しに消極的な姿勢を見せている点が、議論の火種となっています。セルハン法相は、身柄の拘束や出国禁止措置の必要性を検討すると述べていますが、その実現性については依然として不透明な状況が続いています。
立ちはだかる「犯罪人引渡条約」の不在と国家の壁
日本政府が最も望んでいる身柄の引き渡しについて、セルハン法相は否定的な見解を崩していません。その最大の理由は、日本とレバノンの間に「犯罪人引渡条約」が締結されていないことにあります。この条約は、逃亡した犯罪者を互いの国に引き渡すためのルールを定めたものですが、これがない場合、引き渡しの可否は受け入れ側の裁量に委ねられることになります。
さらにセルハン法相は、自国民を他国へ引き渡さないことは国際的な慣習であると強調しました。過去にレバノンが自国民を外国に引き渡した前例はないとしており、レバノン国籍を持つゴーン氏を守る姿勢を暗に示唆しています。編集者の視点から見れば、これは法的な問題以上に、国家のプライドや政治的な力学が強く働いている事態であり、一筋縄ではいかない外交戦の様相を呈しています。
2020年01月04日現在、レバノン検察は事情聴取の時期について「可能な限り速やかに行う」として、調整を急いでいます。しかし、現地で「英雄」とも称されるゴーン氏に対し、どこまで踏み込んだ捜査が行われるかは疑問が残ります。日本側が国際社会を通じてどこまで圧力を強められるかが、この前代未聞の逃亡事件を解決に導くための大きな鍵を握ることになるでしょう。
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