近年、若い世代の「日本酒離れ」がささやかれるなか、静岡県内ではこれまでにないユニークな日本酒の楽しみ方を提案する動きが活発になっています。地元の伝統的な酒造りの技術を活かしながら、これまでにない斬新な切り口で開発された新商品が相次いで登場しているのです。SNSでも「日本酒の新しい扉が開きそう」「これなら普段飲まない人でも試しやすい」といった期待の声が数多く寄せられており、国内外での消費拡大に大きな注目が集まっています。
アイスクリーム製造を手掛けるサンオーネスト(沼津市)は、2020年夏ごろに向けてシャーベット「氷酒」の発売を予定しています。県酒造組合とタッグを組み、静岡県が誇る独自の酒米「誉富士」から生まれた辛口純米酒を贅沢に使用しました。独自の冷凍技術によって酒かすなどと共に凍らせ、手で手軽に押し出して食べられるスティック型容器を採用しています。アルコール度数は3%程度に抑えられており、スイーツ感覚で味わえるのが魅力です。
主にテーマパークやイベント会場での販売を視野に入れており、1本300円での展開を想定しています。同社の吉井健一社長は、世界的な日本酒ブームを背景に、今後は海外市場への進出も視野に入れていると熱く語ってくれました。氷酒のような革新的な商品が、日本の素晴らしい酒文化を世界へ発信する新たな架け橋になることは間違いありません。伝統を守るだけでなく、柔軟な発想で間口を広げる試みは非常に有意義であると感じます。
さらに、老舗の蔵元も飲みやすさを追求した驚きの逸品を送り出しています。浜松市の花の舞酒造は、2019年3月に「花の舞ヨーグルト酒」を発売しました。地元のいなさ酪農業協同組合と連携し、日本酒にヨーグルトを絶妙にブレンドした新感覚のリキュールです。アルコール度数は一般的な日本酒よりも低い5%に設計されています。砂糖を一切使用しないことで、ヨーグルト本来の爽やかな酸味とお米の自然な甘みが引き立つ仕上がりです。
特定のグルメにターゲットを絞った「特化型」の日本酒も、新たな需要を掘り起こしています。市民団体「静岡おでんと日本酒同好会」と駿河酒造場(静岡市)は、ご当地グルメとして名高い静岡おでんに最高にマッチするオリジナル銘柄「しぞーかおでん酒」を共同開発しました。有志による投票で選ばれた純米酒「天虹」をベースに複数の銘柄をブレンドし、香りを抑えつつ後味にキレを持たせることで、おでんも一歩進む味わいを実現しています。
こちらの「しぞーかおでん酒」は、2019年12月から静岡市内の飲食店や土産店で取り扱いが始まっています。可愛いおでんのイラストが描かれた300ミリリットルの小瓶で、価格は税別480円です。駿河酒造場の萩原大吾専務は、普段日本酒に馴染みのない方にも楽しんでほしいと期待を寄せています。こうした「食とのペアリング」を重視したアプローチは、観光資源との相乗効果も高く、地域の魅力を発信する素晴らしい取り組みだと言えます。
実は静岡の地酒は、すっきりとした「淡麗辛口」でバランスが良いことで知られています。さらに大きな特徴として、本醸造酒や純米酒、吟醸酒といった国が定めた原料や精米歩合の基準を満たす「特定名称酒」と呼ばれる高付加価値な日本酒の割合が極めて高い点が挙げられます。これは、大量生産の普通酒ではなく、職人が手間暇をかけて仕込んだ高品質なお酒に特化してきた、静岡の酒蔵たちのこだわりと戦略が成功を収めた証拠にほかなりません。
出荷数量における特定名称酒の割合は、2018年4月から2019年3月までの期間で84.6%という驚異的な高水準を記録しています。県酒造組合が語るように、かつては米どころに比べて「酒造後進県」と呼ばれた時代を乗り越え、独自の価値を磨き上げてきた結果でしょう。単なる伝統文化の枠に留まらず、時代に合わせた感性で進化を続ける静岡の地酒から、今後も目が離せそうにありません。
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