🤖レジ待ち解消・お買い物に楽しさを! 小売業の未来を変えるキャッシュレスとエンタメ化戦略

近年、インターネット通販の存在感が増す中で、実店舗を持つ小売業界は、顧客を店頭に呼び戻すための革新的な施策を次々と打ち出しております。日本経済新聞社がまとめた2018年度の小売業調査(第52回)からは、各社がIT技術を駆使し、お買い物の利便性を飛躍的に高めようと取り組む姿が鮮明に見えてまいりました。単に便利にするだけでなく、店舗での体験そのものを魅力的なエンターテインメントへと変貌させ、リアル店舗ならではの価値を追求しているのです。

しかしながら、この調査で明らかになったのは、業界全体の厳しい現状です。2018年度の小売業全体の営業利益は、対前年度比で1.8%増にとどまり、前回調査に比べて5.3ポイントも悪化しています。特にスーパー業界は3.7%減とマイナスに転じるなど、厳しい経営環境に直面していることが分かります。これまで収益拡大の要であった、画一的な品揃えと店舗網の拡大で成長を図る「チェーンストア」方式が、少子高齢化やモノ余りの時代においては通用しにくくなっているのです。今、小売業界には、商品の個性はもちろんのこと、お買い物の「仕方」そのものを変える抜本的な改革が求められています。その切り札として注目を集めているのが、キャッシュレス決済やセルフレジといった、最新のIT活用技術にほかなりません。

買い物を「楽しいイベント」に変えるイオンの挑戦として、2019年5月末から一部店舗で開始されたのが「レジゴー」です。これは、来店客が店頭で貸し出されるスマートフォンや専用カートに搭載されたバーコードリーダーを使い、欲しい商品のバーコードを自分で読み取る仕組みで、俗にいうセルフスキャン決済の一種です。これにより、会計は専用レジでの支払い手続きのみで完了するため、一般的なセルフレジのように、商品をもう一度スキャンする手間や、レジでの待ち時間を大幅に短縮できるのが最大のメリットでございます。

この「レジゴー」を体験したご家族からは、「(並ばずに済むので)便利ですね」といった声が聞かれる一方で、特に子連れの買い物客からは「私もやりたい!」「お仕事してるみたいで面白い」といった、レジ打ち体験を楽しむ子供たちの歓声があがっております。イオンリテールの山本実オペレーション本部長も、将来的にはスキャンした商品に応じたおすすめ料理提案などのサービス提供を構想しており、リアル店舗の強みを生かした「エンターテインメント性」の訴求によって、米アマゾン・ドット・コムのようなネット通販の巨頭に対抗しようという強い意志が感じられます。お買い物を単なる作業ではなく、楽しくワクワクする体験に変えるこの試みは、新しい生活様式を生み出す可能性を秘めているでしょう。

スポンサーリンク

現金ゼロ!完全キャッシュレススーパーの最前線

一方、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H.)傘下のカスミは、お買い物の「利便性」を極限まで追求する、さらに大胆な実験を始めております。2018年10月、茨城県つくば市の筑波大学構内に開業した「カスミ筑波大学店」は、レジ前に「NO Cash!」のポスターが掲げられている通り、現金を一切扱わないという、完全キャッシュレス決済の実験店なのです。電子マネー「WAON(ワオン)」やクレジットカードなど、キャッシュレス決済にのみ対応したセルフレジが9台設置されており、来店客は次々とスムーズに会計を済ませていきます。

藤田元宏社長は、開業当初はトラブルや苦情が増えることを懸念していたそうですが、実際には「小銭の出し入れがなくスムーズで、むしろ好感が持てる」という声が大半を占め、順調な立ち上がりを見せております。同大学に通う坂見一将さん(18)のように、以前は現金派だった方が、この店に通うことでキャッシュレスの便利さに目覚め、「他の店でも電子マネーを使うようになった」という、消費者の行動変容を促す効果も生まれているのです。

この完全キャッシュレス化は、店舗側の働き方改革にも大きく寄与しています。箱田直美店長によると、レジの精算作業が大幅に楽になり、閉店後の現金管理業務(売上金の計算、確認、過不足のチェックなど)が不要になったことで、従来は遅くなりがちだった全従業員の退勤時間が、閉店後1時間以内に収まるようになったとのことです。さらに、レジ担当の人員を最低限に抑えられるため、代わりに接客サービスに時間を割く余裕も生まれました。これにより、目の不自由な方への買い物支援といった、きめ細やかなサポートが可能になり、「サービスの余裕が生まれた」と箱田店長は語ります。

未来のスーパーへ向けたさらなるデジタル戦略

カスミ筑波大学店では、さらに踏み込んだ実験的取り組みが進められています。2019年4月からは、店内のイートインコーナーやテラス席の全約70席に人感センサーを設置し、リアルタイムの空席情報をネット上で公開するサービスをスタートいたしました。これは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術を活用して、利用客の利便性を高める試みです。さらに今後は、来店客自身のスマートフォンをスキャナーとして利用し、買い物中に会計を済ませる「レジゴー」に似たサービスや、カメラ映像による購買行動の分析も計画されているといいます。

U.S.M.H.の山本慎一郎ICT本部長は、「売り手側の視点だけでは、キャッシュレスなどのサービスは浸透しない。消費者側の立場で利便性を高める仕掛けが必要だ」と指摘しています。つまり、新しいデジタル戦略を成功させる鍵は、お客様に負担をかけず、「楽しさ」や「便利さ」を分かりやすくアピールすることにあるのでしょう。今後、ライフコーポレーションとアマゾンの提携による生鮮・総菜のネット販売開始など、スーパーが強みとしてきた分野でも競争は激化する見通しです。

小売業界は、2019年10月に予定されている消費増税前の駆け込み需要とその後の落ち込みへの警戒を強めておりますが、私は、こうしたIT技術によるリアル店舗の進化こそが、ネット通販との明確な差別化を図るための生命線になると確信しています。買い物の利便性と楽しさを両立させ、「行きたい」と思わせる店舗体験の創造こそが、消費者を引き付ける最も強力な魅力となるはずです。レジ待ちのイライラ解消とお買い物エンタメ化は、これからの小売業の発展を占う重要なキーワードとなるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました