2019年の大学サッカー界において、圧倒的な強さで旋風を巻き起こしたのが明治大学体育会サッカー部です。関東大学サッカーリーグ戦の1部で史上最多となる勝ち点を叩き出し、主要な大学タイトルをすべて総なめにする「3冠」という偉業を成し遂げました。さらに驚くべきことに、卒業後にJリーグの各クラブへ進む保有選手は9名にも上るのです。この個性の強いタレント集団をまとめ上げ、最強の組織へと鍛え上げた栗田大輔監督の経歴は、なんと現役のサラリーマンという異色のプロフィールの持ち主でした。
栗田監督は、大手総合建設会社(ゼネコン)である清水建設に勤務しています。SNSでも「サラリーマンを続けながら3冠を達成するなんて異次元すぎる」「ビジネスの組織論がサッカーに活きている」と、その卓越した手腕に絶賛の声が相次ぎました。企業のトップが示す「経営方針」のような組織づくりのノウハウが、現在の強いチームを支える背景にあるのでしょう。私は、この「サッカーとビジネスの融合」こそが、これからのスポーツ界における新しい指導者像のロールモデルになると確信しています。
インカレ決勝で見せた驚異の逆転劇と「12月22日」へのこだわり
2019年12月22日、小雨が降りしきる駒場スタジアムで全日本大学サッカー選手権(インカレ)の決勝戦が開催されました。試合は90分で決着がつかず延長戦へ突入し、延長前半の92分に桐蔭横浜大学に先制ゴールを許す苦しい展開を迎えます。しかし、ここからが明治大学の本領発揮でした。「全員が攻めるしかないと分かっていた」とJリーグへ進む森下龍矢選手が振り返るように、チームの運動量と攻撃スピードは一気にギアが上がります。
先制されたわずか4分後の96分にPKで同点に追いつくと、その2分後には鮮やかな逆転劇を演じ、112分には決定順位となる3点目を奪って勝負を決めました。この驚異的な粘り強さの根源には、新チームが始動した2019年2月3日に栗田監督が掲げた「2019年12月22日に一番強い個人、チームになろう」という明確な目標設定があります。決勝戦の日付を具体的に植え付けることで、チーム全体の方向性を見事に統一させたのです。
近年の明治大学は、リーグ戦で好成績を収めながらもインカレでタイトルを逃す悔しい経験を重ねてきました。だからこそ、2019年9月に総理大臣杯を制し、リーグ戦で歴代最多の勝ち点56を積み上げて優勝を決めても、選手たちは「まだ通過点」と口を揃えて兜の緒を締めていたのです。キャプテンの佐藤亮選手が「やっと笑えます。でも笑いを超えて涙でした」と本音を漏らしたシーンには、多くのファンが感動の声を寄せていました。
常識を覆す独自の攻撃型布陣「3-2-3-2」システムとは?
1921年創部の名門である明治大学は、これまでに長友佑都選手や室屋成選手といった日本代表のサイドバックを輩出してきました。2015年に栗田監督が就任して以降、主要大会での優勝数は6回にまで増加しています。その強さを具現化しているのが、栗田監督が選手の特徴を極限まで追求して辿り着いた「3-2-3-2」という独自のフォーメーションです。これは、中盤の底に位置するボランチ2人の前方に、サイドハーフを配置する超攻撃的な陣形を指します。
このシステムでは、ピッチの横幅いっぱいに位置する「両アウトサイド」のポジションに、広い守備範囲と圧倒的な推進力が求められます。ここにはFC東京へ進む中村帆高選手と、サガン鳥栖へ進む森下選手という傑出した才能が君臨していました。彼らの長所を最大限に伸ばすために考案された戦術であり、中村選手も「最初は高いハードルに驚いたが、やってきた成果を決勝で出せた」と手応えを語ります。個の育成と創造的なサッカーの融合が、最高の形で証明されました。
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