イオンが5年で7割増!個人株主が「非製造業」に急増する理由と失敗しない株主優待の選び方

いま、日本の投資マーケットで大きな地殻変動が起きています。これまで個人投資家に大人気だった自動車や電機といった「重厚長大」な製造業の株主数が伸び悩む一方で、小売りやサービス業といった「非製造業」の株主数が爆発的に増加しているのです。上場企業約3600社を対象にした調査によると、非製造業の個人株主数は2012年度に製造業を逆転しました。その後も約3割の増加を記録しており、産業構造の移り変わりを映し出すかのように、個人の資金シフトが明確になっています。

この明暗を分ける最大のカギとなっているのが、企業が投資家に贈る「株主優待」の存在です。特に顕著な例が流通大手のイオンでしょう。同社では100株以上を保有する株主を対象に、毎日の買い物金額から最大7%をキャッシュバックする驚きの特典を用意しています。さらに、店舗内にある特別な「イオンラウンジ」が利用できたり、映画を大人1000円という破格の料金で鑑賞できたりと、生活に密着したサービスが満載です。SNSでも「優待生活の必須アイテム」として、主婦層を中心に絶大な支持を集めています。

その結果、イオンの株主数は2018年度に約73万人へ達し、わずか5年間で7割も急増しました。このように、消費者に近い企業ほど「優待」をフックにして個人投資家をファン化し、本業の売り上げも伸ばすという見事な相乗効果(シナジー)を生み出しています。実際に5年前と比較すると、サービス業では192万人、小売業では143万人もの株主が増加しました。一方で、かつての花形だった鉄鋼業の日本製鉄は株主数が約34万人へと20%も減少し、対照的な結果となっています。

家電量販大手のヤマダ電機も、この優待効果で躍進した1社です。制度をより手厚く拡充した結果、2018年度の株主数は22万人と、4年間でなんと5倍に跳ね上がりました。当時の株価ベースでは6万円弱の投資で、年間3000円分の買い物優待券が手に入る仕組みです。これは優待だけで利回りが5%を超え、配当金と合わせると7%台という驚異的な高利回り(投資額に対するリターンの割合)となります。ネット上では「銀行に預けるより断然おトク」と、若者の間でも大きな話題になりました。

調査機関である大和インベスター・リレーションズによると、優待を導入する企業は2019年9月時点で1521社にのぼり、過去最多を更新しています。企業同士が互いの株を持ち合う「株式持ち合い」が縮小する中、経営を安定させるために個人のファン(安定株主)を増やしたいという企業の思惑が背景にあるようです。しかし、この「優待バブル」とも言える過熱ぶりには、専門家や市場から厳しい視線も注がれています。あまりに大盤振る舞いな優待は、企業の体力を削りかねないからです。

実際、ファミリーレストランを展開するすかいらーくホールディングスでは、株主数が再上場後の4年で6倍に激増したものの、2018年12月期には優待の費用が34億円もの減益要因になってしまいました。優待券で食事をする人が増えすぎると、現金収入が減って経営を圧迫するという本末転倒な事態を招きます。また、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスが「国内外の株主への公平な利益還元」を理由に2019年末に優待廃止を発表したように、優待の権利を得られない外国人投資家からの批判も根強くあります。

私は、この「優待ブーム」の持続性について、投資家側も一歩引いて冷静見極めるべきだと考えます。目先の利回りの高さだけに目を奪われ、業績が悪い企業の株を買ってしまうのは非常に危険です。企業側も、単なるバラマキではなく、自社のサービスを愛してもらうための健全な仕組みづくりが求められています。私たち個人投資家は、優待内容だけでなく、企業の稼ぐ力(本業の業績)もしっかりとチェックした上で、長期的に応援できる企業を選ぶ視点が何よりも大切になるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました