島根県益田市に拠点を置くプラスチック金型製造のアケボノが、新たな事業の柱として医療・食品分野への本格参入を発表いたしました。これまでの同社は、主に自動車部品向けの金型製造を主力として事業を展開してきましたが、近年、自動車メーカーによる生産拠点の海外移転が相次いだことで、受注の伸び悩みという課題に直面していた背景があります。そこで同社は、長年培ってきた精密加工技術を活かし、需要が堅調な分野へと舵を切る決断を下したのでしょう。
この新分野進出を後押しするのが、新たに導入された高剛性工作機械です。これはコンピューターによる数値制御、いわゆるCNC(Computerized Numerical Control)に対応した高精密穴あけ機(ジグボーラー)と呼ばれる最新鋭の設備になります。この高性能機械を導入するために、島根県中小企業団体中央会のものづくり支援事業の採択を受け、約4,500万円もの投資が行われました。この設備投資によって、アケボノは試作段階に留まっていた医療用製品の金型製造を、いよいよ本格的な量産体制へと移行できるようになるのです。
特に医療分野において、注射器やカテーテル(体内に挿入して検査や治療に用いる細い管)などの製品は、衛生上の観点から「使い捨て」が基本となります。そのため、自動車部品向けと比較して、日産で4万〜8万個という、2倍以上に相当する圧倒的な生産量が求められるのが特徴です。また、成形機から金型へ樹脂を注入する回数、すなわち金型の耐久性についても、自動車向けの2倍から4倍という、非常に高い水準が要求されます。アケボノが導入した高剛性工作機械は、まさにこの耐久性と量産性という高度な要求に応えるための切り札と言えるでしょう。
このニュースに対し、SNSでは「地方の企業が技術革新で新しい分野に挑むのは素晴らしい」「自動車部品で培った匠の技が医療現場を支えるのは心強い」といった、ポジティブな反響が寄せられています。私は、これまで培ってきた高度な金型製造技術を、人々の命や健康に直結する医療分野、そして日々の生活を豊かにする食品分野へと応用するアケボノの戦略は、非常に理にかなっており、また地域経済活性化のモデルケースになると強く感じています。技術力は国内に残しつつ、市場を広げる英断と言えるのではないでしょうか。
アケボノは、この新しい挑戦によって、2022年9月期までに、この医療・食品という新分野での売上高の比率を、全体の10%以上に高めることを具体的な目標として掲げているとのことです。さらに、医療分野での量産化の見通しがついたことに続き、2020年からは食品容器向けの金型製造にも乗り出す計画です。自動車業界の変革期に直面しながらも、その卓越した技術力をもって、人々の生活に密接に関わる分野へと事業領域を拡大していくアケボノの今後の動向には、引き続き注目が集まるでしょう。
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