大河ドラマ愛好家にとって、2020年の幕開けは少しもどかしいものとなりました。出演者の急な交代劇が影響し、最新作「麒麟がくる」の初回放送日が2020年1月5日から2020年1月19日へと延期されたためです。例年であれば新ドラマのスタートとともに「今年も1年頑張ろう」と活力を得る視聴者が多いだけに、SNS上でも「早く光秀に会いたい」「待ちきれない」といった切実な声が数多く寄せられています。
振り返れば、2019年に放送された「いだてん〜東京オリムピック噺〜」は、全話の平均視聴率という数字の面では過去最低を記録してしまいました。しかし、綿密に張り巡らされた伏線の鮮やかな回収や、戦争責任という重いテーマへの鋭い言及など、作品のクオリティは極めて高いものでした。時代の最先端を行く優れた演出だったからこそ、伝統的な「日曜夜8時」という大河ドラマの枠組みには、少し尖りすぎていたのかもしれません。
歴史を紐解くと、かつて放送された「平清盛」も視聴率の獲得には苦戦していました。港町への遷都を通じて日本を世界へ開こうとした改革者、という斬新なキャラクター設定が、王道の英雄像を求める視聴者の期待とすれ違ってしまった印象です。また、大河ドラマの黄金期であっても、赤穂事件を江戸の社会構造から緻密に分析した「峠の群像」などは思うように数字が伸びませんでした。
このように「国家のあり方」や「人間はどう生きるべきか」という、大上段に構えたマクロな問題提起を行う作品は、現代の視聴者には少し敷居が高く感じられるようです。ここで言うマクロとは、個人の枠を超えた社会や国家全体という大きな視点のことを指します。SNSの反応を見ても、あまりに壮大なテーマよりは、登場人物に感情移入できる身近なドラマを求める傾向が強まっています。
その一方で、視聴者から絶大な支持を集めるのが、地方の武士や戦国大名が激動の時代を必死に生き抜くサバイバルの物語です。近年のヒット作である「真田丸」や「軍師官兵衛」がまさにこの系譜に属します。実は、歴代最高視聴率を記録した「独眼竜政宗」や、それに次ぐ「武田信玄」も同様の構造を持っています。これらは、過酷な現実社会やビジネスの現場で戦う会社員や経営者の心に、強く響くのでしょう。
満を持して2020年1月19日からスタートする物語の主役は、知将として名高い明智光秀です。彼は天下国家の理想を語るカリスマとしても、あるいは組織の狭間で泥臭く生き残りを図るリアリストとしても描くことができる、非常に魅力的な人物だと言えます。私は、今作こそ現代を生きる私たちに最も必要な「心の栄養剤」になると確信しています。
長引く不況や不透明な経済環境が続く厳しい現代において、人々がエンターテインメントに求めているのは、実体のない華やかな夢物語ではありません。むしろ、泥にまみれながらも明日を生き抜くための、リアルな励ましや勇気ではないでしょうか。戦国という乱世を光秀がどう泳ぎ切るのか、その内容と視聴率の動向から目が離せそうにありません。
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