2020年の幕開けを飾るはずだったNHK大河ドラマ『麒麟がくる』が、放送開始を目前にして異例の事態に見舞われました。2019年11月26日、NHKは当初2020年1月5日に予定していた初回放送日を、2週間延期して2020年1月19日に変更すると発表したのです。この決定の背景には、織田信長の妻・帰蝶役として出演予定だった女優、沢尻エリカ容疑者が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたという衝撃的な事件がありました。
戦国時代の智将・明智光秀の半生を描く本作において、帰蝶は物語の鍵を握る極めて重要なヒロインです。代役を務める川口春奈さんによる急ピッチの撮り直し作業が進められていますが、クオリティを維持するためにはどうしても物理的な時間が必要だったのでしょう。撮影現場では連日のようにハードなスケジュールが組まれていると推察されますが、制作陣の「最高のものを作りたい」という執念が、今回の「2週間延期」という決断に繋がったに違いありません。
SNS上ではこの発表に対し、「延期してでも良い作品を届けてほしい」という応援の声や、「代役の川口春奈さんを全力で支持する」といったポジティブな反応が数多く見受けられます。一方で、歴史ファンからは「待ちきれないけれど、中途半端なものを出すよりは賢明な判断だ」と、NHKの妥協のない姿勢を評価する意見も上がっています。視聴者の期待値は、皮肉にもこのトラブルをきっかけに、より一層高まっているような熱気を感じます。
ここで少し専門的な解説を加えますと、大河ドラマは通常のドラマと異なり、「時代考証」というプロセスが非常に重視されます。当時の所作や言葉遣い、衣装の細部に至るまで専門家の指導が入るため、単に代役を立てて撮影するだけでは済みません。背景に映り込むセットやエキストラの配置まで整合性を取る必要があり、その緻密な作業工程が、今回の放送延期の大きな要因の一つとなっているのは間違いありません。
私個人の意見としては、今回の延期は作品のブランドを守るための「攻めの決断」であったと捉えています。不祥事によって作品の価値が損なわれることは避けるべきであり、万全の状態でスタートを切ることこそが、出演者やスタッフの努力に報いる唯一の道ではないでしょうか。災い転じて福となす。この2週間の空白が、かえって『麒麟がくる』というドラマの歴史的な重みを増してくれることを、一人の視聴者として心から願って止みません。
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