人口減少と少子高齢化が加速する現代の日本において、地方の交通インフラ維持は極めて深刻な課題となっています。島根県内では、マイカーの運転が難しくなったシニア世代や訪れる観光客の移動を支えるため、最先端の技術や新たな運行システムを取り入れた実証実験が相次いで開始されました。単なる移動手段の確保にとどまらず、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるための生活基盤を守るという、非常に切実な挑戦が今まさに幕を開けているのです。
SNS上でもこの取り組みは大きな話題を呼んでおり、「お年寄りの買い物や通院が楽になる素晴らしい試み」「全国の過疎地でもすぐに導入してほしい」といった、期待と応援の声が数多く寄せられています。
高台の住宅街を駆け抜ける!ワンコインで乗れる電動カートが本格始動
島根県松江市の北西に位置する法吉、比津が丘、うぐいす台の3つの団地は、1970年代から1990年代にかけて造成された美しい新興住宅街です。しかし、現在は住民の高齢化が進み、坂道の多い高台という地形も相まって、自家用車を手放した高齢者が孤立しやすい環境にありました。幹線道路から奥まった場所にあるためバスの便数も少なく、買い物や病院へのアクセスが大きな障壁となっていたのです。
そこで社会福祉法人みずうみが立ち上がり、2020年4月よりゴルフ場のカートを改造した6人乗りの小型車両による有料運行をスタートさせます。
このサービスは、事前の予約に合わせて利用者の目的地まで柔軟に送迎を行う「デマンド運行」というスタイルを採用しています。運行時間は午前9時30分から午後14時00分までとなっており、驚くべきはその料金設定です。午後12時30分までの便はなんと無料、それ以降の時間帯でも1日わずか100円という、家計に優しいワンコイン価格で利用できます。
実は、2019年5月から実施されていた無料の実証実験では、同年11月中旬までに延べ約1600人もの人々が利用し、地域住民の足としてすっかり定着していました。
有料化に踏み切った背景には、「タダで乗り続けるのは申し訳ない、気兼ねしてしまう」という利用者の優しい本音があったからだそうです。100円という低価格ですが、車体に掲載する企業広告や協賛金を組み合わせることで、持続可能なビジネスモデルとして十分に運営できる見通しが立っています。福祉の実績が豊富な法人が主体となることで、シニア層が本当に安心して外出できる環境が整いつつあります。
世界遺産の街を優しく守る!環境に配慮した次世代モビリティ
一方、世界遺産として名高い石見銀山遺跡を抱える島根県大田市でも、ユニークな取り組みが展開されています。2019年12月16日から始まった実験では、観光の拠点となる大森地区と、かつての坑道跡である龍源寺間歩を結ぶ約3キロメートルの区間で、電動カートが毎日6往復、無料で運行されています。このプロジェクトは2020年3月までの期間、環境省の支援を受けて実施されているものです。
この運行ルートは歴史的な町並み保存地区に指定されており、美しい景観を保護するため、道幅が狭く一般車両の乗り入れが制限されています。そのため、これまでは徒歩かレンタル自転車しか移動手段がありませんでした。
今回導入された車両は「グリーンスローモビリティ(GSM)」と呼ばれるもので、時速20キロメートル未満で公道をゆったりと走る、地球環境に極めて優しい次世代の移動手段です。
実際に乗車してみると、フロントガラスがない開放的な構造も手伝って、数字以上の心地よいスピード感が肌で感じられます。松江市の住宅街ではあまりの人気に配慮が追いつかないほどの盛況ぶりを見せる一方で、観光地である大田市では乗車定員や運行本数の制限から、乗りたくても乗れない観光客の姿が見られるなど、今後の有料化や本格導入に向けて解決すべき課題も見えてきました。
AIが最適なルートを導き出す!月額定額制の乗り放題タクシー
さらに、同じ大田市の温泉津町井田地区では、過疎地の交通を劇的に変える可能性を秘めた「定額制の乗り放題タクシー」の試験運行が2019年11月から行われています。人口に占める高齢者の割合が5割を超えるこの中山間地域では、公共交通機関が極めて乏しく、移動の自由が制限されていました。
このサービスは月額3300円の定額料金を支払えば、井田地区と温泉津町の中心部などの間を何度でも移動できる画期的なシステムです。
ここで活躍しているのが、人工知能(AI)を活用した最新の配車システムです。複数の予約状況からAIがリアルタイムで最も効率的な走行ルートを瞬時に導き出し、無駄のない相乗り送迎を実現しています。国土交通省のモデル事業として2020年3月まで実施され、次の年度からの本格的な実用化を目指しています。
現状では利用登録者が18人と、目標の30人には届いていませんが、今後は運行エリアの拡大や丁寧な利用方法の周知を進めることで、認知度を高めていく方針です。
編集部EYE:技術の導入だけでなく「心のバリアフリー」と情報の可視化が成功へのカギ
地方の交通弱者を救うこれら一連の取り組みは、日本が直面する大きな課題に対する素晴らしい一歩だと私は確信しています。一方で、同じ島根県内の雲南市で実施された別の実験では、1便あたりの乗客数が平均1人を下回るといった苦い結果も報告されており、ただ最先端の乗り物を走らせるだけでは住民に利用してもらえないという現実も浮き彫りになりました。
移動に悩む高齢者の方々は、新しいデジタル技術や予約システムに対して心理的な抵抗を感じてしまうケースが少なくありません。
移動手段が持続可能なサービスとして地域に根付くためには、運行主体が縦割りの垣根を越えて連携すること、そして何よりも、スマートフォンを持たないお年寄りでも「今どこに車がいて、どうすれば乗れるのか」が直感的に伝わる、親切でスムーズな情報提供が不可欠でしょう。誰一人として取り残さない優しいスマートシティの実現へ向けて、島根県の挑戦から目が離せません。
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