福島県郡山市がいま、医療産業の新たな拠点として世界から注目を集めようとしています。JR郡山富田駅の南側に広がる約30ヘクタールの富田地区にて、医療機器関連企業を呼び込む一大プロジェクト「メディカルヒルズ構想」が本格的に動き出しました。2011年3月11日の東日本大震災を乗り越え、福島が誇る「ものづくり」の力を医療分野に集約させるこの挑戦は、地域の未来を大きく変える可能性を秘めているのです。
福島県はもともと、オリンパスやジョンソン・エンド・ジョンソンといった世界的な医療機器メーカーが拠点を構える、全国屈指の医療機器生産額を誇るエリアです。さらに、がん治療研究で名高い南東北グループなどの有力医療機関も集結しています。こうした強みを最大限に活かし、産学官が連携して「医療の街」を作り上げる計画は、震災からの復興の柱として、ロボットや再生可能エネルギーと並び、大きな期待を背負って出発しました。
SNS上では「震災をきっかけに、これほど前向きな産業が育つのは素晴らしい」「地元の雇用が活性化してほしい」といった、期待と応援の声が数多く寄せられています。2016年に設立された「ふくしま医療機器開発支援センター」を核としたこの構想は、単なる工業団地の造成にとどまりません。最新の医療技術を支える企業や研究機関が一堂に会することで、福島から世界へ向けたイノベーションが発信される土壌が整いつつあるのです。
規制の壁を突破し、郡山市が主導する独自の都市計画
しかし、ここまでの道のりは平坦ではありませんでした。当初、予定地は開発が厳しく制限される「市街化調整区域」に指定されており、民間企業の進出には高いハードルが存在したのです。市街化調整区域とは、無秩序な市街化を防ぐために建物の建設が原則認められない区域を指します。実際に、サイバーダインなどの有力企業が進出を検討した際も、この開発規制が大きな課題となり、産業集積の具体案づくりには相応の時間を要することとなりました。
そこで郡山市は、行政と民間が共同で計画を策定する「地区計画」制度を活用するという、非常に賢明な手法を選択しました。これにより規制の壁を乗り越え、2020年1月には具体的な都市計画案がまとまる予定です。県が浜通り地区のロボット産業支援に注力するなか、郡山市自らが前面に立って推進する姿勢は、地方自治の鏡とも言えるでしょう。自立したリーダーシップこそが、停滞を打破する鍵になると私は確信しています。
先行モデルとして意識されているのは、阪神・淡路大震災から見事な復活を遂げた「神戸医療産業都市」です。神戸では理化学研究所などの誘致に成功し、今や350を超える団体が集まる巨大クラスターへと成長しました。郡山においても、開発支援センターの収入が前期比の約1.7倍に急増し、インキュベーション施設(起業家支援施設)が満室になるなど、追い風が吹いています。ようやく、本格的な企業誘致に向けた舞台が整ったと言えるでしょう。
2019年12月04日現在、人口減少や台風被害といった多難な状況に直面していますが、だからこそ攻めの産業振興が求められています。福島が単なる被災地ではなく、高度な医療技術で人々の命を救う「希望の地」へと進化する日は、もうすぐそこまで来ています。地元の期待を背負ったこの「メディカルヒルズ」が、数年後には日本の医療を支える中枢として、活気に溢れている姿を想像せずにはいられません。
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