病気になったとき、私たちが当たり前のように手にしているお薬。しかし、その背後で「薬が届かなくなるかもしれない」という重大なリスクと戦っている企業があります。後発医薬品(ジェネリック医薬品)大手として知られる東和薬品は、2019年12月04日現在、薬の主成分である「原薬」を複数のルートから確保する取り組みを加速させています。
「原薬」とは、薬が本来の効き目を発揮するために欠かせない有効成分そのものを指します。実はジェネリック医薬品の製造コストにおいて、この原薬が占める割合は非常に大きいのです。東和薬品では、この大切な成分を1社だけに頼らず、複数の会社から購入する「複数購買」の比率を、5年前から約30ポイントも引き上げ、現在は約60%にまで到達させています。
ネット上のSNSや医療現場からは「ジェネリックは供給が不安定で不安」という声が聞かれることも少なくありません。こうした不信感を払拭するように、同社は売上上位100品目に限れば90%以上という驚異的な複数購買率を達成しました。ライバル企業である沢井製薬の約50%や、日医工の約45%と比較しても、その危機管理意識の高さが際立っています。
過去の教訓を糧に!海外依存のリスクと戦う国産化へのこだわり
なぜ、ここまで徹底して調達先を分けるのでしょうか。その原点は2012年に遡ります。当時、韓国メーカーが製造した原薬に不備が見つかり、日本の製薬会社13社が業務改善命令を受けるという苦い経験がありました。1社に依存していれば、その供給が止まった瞬間に、患者さんへ届けるお薬が消えてしまうという、極めて恐ろしい事態を招くからです。
実際に2019年2月には、他社の抗菌薬がイタリア産原薬の異物混入や、中国工場の環境規制トラブルによって供給停止に追い込まれる事件も発生しました。こうした事態を防ぐため、東和薬品は「地産地消」をスローガンに掲げています。海外産の安価な原薬に甘んじることなく、国産比率55%を維持しながら、国内での自社製造にも力を注いでいるのです。
編集者としての視点ですが、命に直結する医薬品において「安さ」よりも「継続的な安心」を優先する東和薬品の姿勢は、企業としての良心の表れだと感じます。2019年10月には他社で発がん性物質の懸念による自主回収が相次ぎましたが、こうしたリスクを未然に防ぐ厳しい現地監査や品質管理体制こそが、今の日本の医療には必要不可欠ではないでしょうか。
透明性の確保で医療の信頼を築く、飽くなき挑戦
東和薬品の森野禎之購買本部長は、主要製品の供給停止を「あってはならない大問題」と断言し、将来的に主力品目の複数購買率100%を目指すと力強く宣言しています。また、2019年6月からは医療従事者向けに原薬の製造国情報を公開するなど、徹底した情報開示を行っています。これは、自分たちの品質に対する自信と責任感の証と言えるでしょう。
もちろん、調達先を増やせばコストや管理の手間は増大します。しかし、海外の不安定な情勢に左右されず、いつでもお薬が手に入る環境を守ることこそが、製薬会社の真の価値です。東和薬品が進めるこの「攻めの安定供給」は、日本のジェネリック医薬品市場全体を、より信頼性の高いものへと進化させていくに違いありません。
コメント