今、世界の投資家たちが熱い視線を注いでいるのは、私たちの日常に欠かせない「美容」の領域です。メーキャップからヘアケア、さらには美容整形のプラットフォームまで、その勢いはとどまる所を知りません。2018年における美容・パーソナルケア分野のスタートアップによる資金調達は、件数こそ200件弱ですが、調達総額は前年比で127%増となる18億ドルを記録し、過去最高の水準に達しました。
SNS上でも「憧れのブランドが大手傘下に入って驚いた」「美容系アプリの進化が止まらない」といった声が多く聞かれ、消費者の関心の高さがうかがえます。投資のプロたちがこれほどまでに資金を投じる理由は、デジタル技術と美容が融合した「ビューティーテック」が、これまでの市場構造を劇的に塗り替えようとしているからに他なりません。こうした期待感の表れが、巨額の資金調達という数字となって如実に現れています。
エグジットの主役たち!企業価値10億ドルを超える11社の衝撃
スタートアップが成長し、投資家が資金を回収することを「エグジット」と呼びます。具体的には他の企業に買収されるM&Aや、株式を公開するIPOがこれに当たります。2019年10月22日時点の調査では、2007年以降に企業価値10億ドル以上、いわゆるユニコーン級の規模でエグジットを果たした企業は11社に上りました。特筆すべきは、そのうちの5社が2017年以降に集中しているという事実でしょう。
エグジット時の評価額でトップに輝いたのは、2016年12月に香港市場へ上場した中国の「美図(メイトゥ)」です。写真補正アプリで一世を風靡した同社の時価総額は、当時約49億ドルに達しました。これに続くのが、2016年6月にジョンソン・エンド・ジョンソンに33億ドルで買収された米ヴォーグ・インターナショナルです。ヘアケア市場でも、独自性を持つブランドにはこれほどの巨額が動く時代になりました。
最近のトレンドを象徴するのが「D2C」というビジネスモデルです。これは「ダイレクト・ツー・コンシューマー」の略で、製造者が仲介業者を通さず、SNSなどを活用して直接消費者に販売する形態を指します。月額制でカミソリを届ける「ダラー・シェイブ・クラブ」が、2016年にユニリーバによって10億ドルで買収された事例は、まさにこのD2Cモデルのポテンシャルを世界に見せつけた象徴的な出来事といえます。
私は、この美容分野の過熱は単なる一時的なブームではないと考えています。従来の大量生産・大量消費のモデルから、テクノロジーを駆使して個人の悩みに寄り添う「パーソナライズ化」へと舵が切られた結果です。大手企業がこれほど高い金額を払ってでも新興ブランドを欲しがるのは、彼らが持つ「消費者との直接的な繋がり」にこそ、未来の価値があると確信しているからではないでしょうか。
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