コンタクトレンズの国内最大手として知られるメニコンが、その卓越した技術力を武器に、全く新しい分野へと進出を開始しています。これまで培ってきた専門知見を「水平展開」し、私たちの健康維持から愛犬のヘルスケア、さらには農業支援に至るまで、多角的なビジネスモデルを構築しようとしているのです。こうした挑戦的な姿勢に対し、SNSなどのネット上では「コンタクトの会社がサプリや農業まで手掛けるとは驚きだ」「技術の使い道がユニークで面白い」といった期待の声が続々と寄せられています。
特に注目を集めているのが、2019年08月に発売された同社初の機能性表示食品「めにサプリ ビルベリー」です。これには、私たちの涙などにも含まれる「ラクトフェリン」というタンパク質が配合されています。この成分は本来、コンタクトレンズの耐久テストを行う際に使用される、いわば研究の「裏方」でした。しかし、目のかゆみや乾きを抑える有用性に着目し、特殊なカプセル技術で腸まで届ける工夫を施すことで、高品質なサプリメントへと昇華させたのです。
メニコンが描く成長戦略は非常に緻密で、2020年01月からはECサイトだけでなく直営店での販売も開始する予定となっています。5年後にはこのサプリシリーズだけで2.5億円の売上を目指しており、コンタクト事業に次ぐ収益の柱として育て上げる意向です。2020年03月期の連結業績は、売上高850億円、純利益40億円と過去最高を更新する見込みですが、現状はその9割以上をコンタクト関連が占めています。既存の技術を流用する新事業は利益率が高く、企業の体質強化に大きく貢献するでしょう。
AIで愛犬の瞳を守る!異業種技術がもたらす獣医療の革命
メニコンの技術は人間だけにとどまらず、家族の一員である「犬」の健康にも光を当てています。2019年10月より子会社のメニワンを通じて開始された「ファンダスアイ」は、まさにAI(人工知能)時代の象徴的なサービスです。これは、スマホなどで撮影した犬の目の画像から、AIが瞬時に病気の可能性を割り出し、獣医師にアドバイスを行う仕組みです。多忙な獣医師にとって、専門外の疾患を見極める強力なサポートツールとなることが期待されています。
この画期的な診断支援を支えているのは、犬用コンタクトレンズの開発過程で蓄積された数千頭分もの膨大な画像データです。この「データの蓄積」こそが、他社が容易に真似できない強みとなっています。白内障などに悩むペットが増える中、こうした早期発見に繋がる技術は飼い主にとっても福音となるでしょう。将来的にはこのサービスを入り口に、手術で使用する眼内レンズの販売拡大も視野に入れており、医療機器メーカーとしての存在感をより一層高めています。
さらに驚くべきは、農業分野への進出です。コンタクトレンズの洗浄液に使用される「酵素」の研究から、稲わらを効率よく分解する強力なパワーを発見しました。収穫後の稲わらは、放置すると翌年の収穫量に悪影響を与え、焼却すれば環境負荷がかかるという農家の悩みがありました。そこでメニコンは、繊維を分解する酵素を製品化し、環境に優しい循環型農業を支援しているのです。一見無関係に見える分野を繋ぐ同社の発想力には、編集部としても脱帽せざるを得ません。
今後の課題は、海外市場でのシェア拡大です。現在、売上高に占める海外比率は1割強に留まっており、米ジョンソン・エンド・ジョンソンのような巨大資本と渡り合うためには、独自の強みが必要です。田中英成社長は、就寝中に角膜の形状を整えて視力を矯正する「オルソケラトロジー」事業などを軸に、中国をはじめとする世界市場へ攻勢をかける構えです。日本の職人魂が生んだ精密技術が、世界中の「瞳」と「生活」を豊かにしていく未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。
コメント