私たちの身の回りにある自動車やスマートフォン、最新の半導体製造装置に欠かせない金属といえばアルミニウムですよね。実は今、このアルミの需給バランスが大きく揺らいでいます。丸紅がまとめたデータによると、2019年11月30日時点における国内3港(横浜、名古屋、大阪)のアルミ新地金の港湾在庫は、合計で32万1200トンに達しました。これは前年の同じ時期と比べて2万5800トン、率にして9%も多い数字なのです。
一般的に国内の適正な在庫水準は25万トン前後と言われていますが、現状はそれを大幅に上回る状態が続いています。なんと6カ月連続で30万トンの大台を突破しており、市場には明らかな「荷余り感」が漂っていると言えるでしょう。SNS上でも「景気のバロメーターであるアルミが余っているのは不安」「製造業の元気がなくなっている証拠かもしれない」といった、先行きの不透明感を懸念する声が数多く上がっています。
港ごとの内訳を詳しく見ていくと、最も在庫が積み上がっているのは横浜港で、前年比7%増の15万5000トンを記録しました。さらに名古屋港も前年比12%増の15万1200トンと大幅に増加しており、主要な物流拠点で供給過剰が目立っています。一方で大阪港は前年並みを維持しているものの、全体的な過剰感を覆すほどの勢いは見られません。まさに日本全国の港でアルミが静かに眠り続けているような状況です。
世界的な景気減速が直撃!自動車と半導体製造のブレーキ
では、なぜこれほどまでに在庫が膨らんでしまったのでしょうか。最大の要因は、米中貿易摩擦を発端とする世界的な景気減速にあります。これによって半導体メーカーが設備投資を急速に手控えるようになり、製造装置向けのアルミ需要が大きく冷え込んでしまいました。追い打ちをかけるように、これまで市場を牽引してきた自動車向けの引き合いも弱含んでおり、行き場を失った地金が港に溢れかえっているのです。
大手商社の現場からも「国内の需給バランスは完全に緩みきっている」という切実な声が聞かれます。アルミ地金を調達する際、メーカーなどの需要家は「割増金(プレミアム)」と呼ばれる、運賃や手数料、地域の需給を反映した上乗せ料金を売り手に支払う仕組みになっています。しかし、この割増金が2020年1月1日から2020年3月31日までの四半期契約において、約3年ぶりの低水準へと下落してしまいました。
市場の専門家の間では、この緩みは一朝一夕には解消されないという見方が大勢を占めています。このまま需要の回復が見込めなければ、2020年4月1日から2020年6月30日までの契約価格も、引き続き低い水準のまま推移する可能性が極めて高いでしょう。素材の価格安は一見すると製品メーカーに有利ですが、その背景にある深刻な需要不足は、日本のものづくり全体の黄色信号と言えます。
編集部の視点としては、このアルミ在庫の急増を単なるデータとして見過ごすべきではないと考えます。自動車や半導体という日本の基幹産業が、いかに世界情勢の荒波に影響されやすいかを物語っているからです。今はまさに耐え忍ぶ時期ですが、各企業にはこの供給過剰を好機と捉え、次世代技術への投資やコスト構造の改革を急ピッチで進めてほしいと切に願います。
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