2019年6月現在、化学業界で大きな価格変動が発生しています。特に、合成繊維や合成樹脂の主要な原料であるカプロラクタムの価格が急落している影響で、この原料を用いて製造される高機能な合成樹脂の市場価格も大きく値下がりしている状況です。化学製品の市場動向に敏感な関係者はもちろん、自動車や家電といった最終製品に関わる多くの関係者にとって、見逃せない変化と言えるでしょう。
価格下落の波は、特に代表的なナイロン樹脂である「ナイロン6」に顕著に現れています。ナイロン6は、その優れた耐熱性や強度から、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)と呼ばれる高性能樹脂の一つに分類され、自動車部品や電子部品など、高い耐久性が求められる分野で幅広く利用されています。アジア市場におけるナイロン6樹脂の足元の取引価格は、1トンあたり1,700ドル程度まで下落しており、これは2019年5月初めの価格と比較して約3割もの大幅な値下がりとなります。
この劇的な価格変動の背景には、世界経済の成長鈍化、特に巨大市場である中国の景気減速が深く関わっています。中国では2018年後半から自動車販売台数が前年実績を下回る状況が継続しており、この不振がナイロン樹脂の需要に大きな打撃を与えているのです。SNS上では「化学素材の相場は中国景気に左右されすぎではないか」「エンプラの価格急落は、自動車産業の冷え込みのサインではないか」といった懸念の声が多く見受けられ、市場の不安感が広まっている様子がうかがえます。
ナイロン樹脂は、その特性から、エンジンの周囲やギア、コネクターといった耐熱性や耐久性が求められる重要な自動車部品に多用されています。国内の大手化学メーカーの関係者からは「ナイロン6樹脂には、流通市場で供給過剰感、すなわち『荷余り感』が目立ってきている」との指摘も出ており、需要の減退が供給を大きく上回っていることが明らかになっています。日系自動車メーカーの販売は比較的堅調を維持しているものの、市場全体の需要を牽引してきた中国大手自動車メーカーの販売台数が減少していることが、樹脂市場の価格下落を決定づける要因となっているのでしょう。
私見ではありますが、このナイロン樹脂の価格急落は、一時的な市場調整に留まらない、自動車産業の構造的な変化を示唆している可能性を秘めていると考えられます。中国市場の減速は世界的なサプライチェーンに大きな影響を与えますから、今後、化学メーカー各社は、価格競争力の強化だけでなく、自動車以外の新たな用途開発や、リサイクル技術の導入といった、より持続可能なビジネスモデルへの転換が急務となるでしょう。エンジニアリングプラスチック(エンプラ)市場全体が、大きな変革期を迎えていると言っても過言ではない情勢なのです。
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