2019年9月14日に発生したサウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」の施設へのドローン攻撃から、早くも4カ月が経過しました。一時は急騰した原油相場も落ち着きを取り戻し、同国の原油生産も同月中に回復したと発表されたため、一見すると供給リスクは去ったように見えます。しかし、実際の石油や化学品の市場を細かく観察していくと、あの衝撃的な事件の爪痕が未だに深く残っているのではないかという、生々しい疑惑が浮かび上がってくるのです。
ネット上やSNSでも「サウジの石油は本当に大丈夫なのか」「ガソリンやプラスチック製品の値上がりに直結するのでは」と、将来の生活への不安を訴える声が後を絶ちません。こうした一般消費者の心配を裏付けるように、国内の液化石油ガス、いわゆるLPGの取引現場からは、サウジアラビアからの配達が度々遅れているという深刻な実態が報告されています。市場のリーダーとして価格を先導してきたアラムコですが、一部の国に対して配送を1週間ほど遅らせる通知を出している模様です。
この遅延の背景について業界関係者は、攻撃直後に不足分を補うために在庫を一気に放出したことで、現在の在庫管理に予期せぬ混乱が生じている可能性を指摘しています。当時被害を受けたのは、複数の油田から集めた原油から不純物やガスを取り除く、いわば品質調整の心臓部にあたる重要施設でした。アラムコ側は短期間で奇跡的な回復をアピールしたものの、専門家の間では「特注品ばかりのプラントがあれだけの打撃を受けて数週間で元通りになるはずがない」との見方が有力です。
高騰する軽質油とナフサが示す歪み
完全復旧には通常1年近くかかるのが常識であり、現在は他の施設や在庫をやりくりして何とか表面上の数字を合わせているに過ぎないと考えられます。その証拠に、2020年2月積みの「エキストラライト」と呼ばれる軽質油の調整金は、事件前の2019年8月と比較して7割以上も値上がりしています。さらに、プラスチックなどの石化製品の原料となる「ナフサ(粗製ガソリン)」のアジア市場価格も、原油価格との差が事件前の3倍近くに広がったまま高止まりを続けている状態です。
私は、この不自然な価格の歪みこそが、サウジの供給力が本調子ではない動かぬ証拠であると考えています。2020年1月に入ってからは、米国とイランの緊張緩和やOPECによる減産拡大、さらには各製油所の定期修理も控えており、中東情勢は複雑さを増すばかりです。市場関係者は今、これまでの常識が通用しない未知のリスクを見据えた慎重な舵取りを迫られており、私たちもエネルギー価格の動向から一瞬たりとも目が離せない局面に立たされています。
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