2020年01月16日、中国の経済を象徴するビッグニュースが世界を駆け巡りました。首都・北京と経済の中心地・上海という2大都市を結ぶ、まさに「大動脈」と呼ぶべき高速鉄道を運営する「京滬高速鉄路」が、ついに上海証券取引所へと株式を公開したのです。市場の期待を一身に背負ったそのデビューは、初日から非常にドラマチックな展開を迎え、多くの投資家たちの視線を釘付けにしています。
取引が始まると同時に買い注文が殺到し、株価は一気に値幅制限の最大値まで跳ね上がる「ストップ高」を記録しました。公募価格である4.88元から約4割も上昇し、一時は6.99元まで値を上げる場面も見られています。中国の新規株式公開(IPO)では、上場後もしばらく高値に張り付いたまま取引を終えるケースが珍しくありません。しかし、今回の京滬高速鉄路は一筋縄ではいかなかったようです。
最高値をつけた直後、市場には利益を確定させようとする売り圧力が押し寄せ、株価は一時6元を割り込むところまで急落しました。最終的な初日の終値は6.77元で着地したものの、この乱高下はインターネット上でも大きな話題となっています。SNSでは「さすが中国一のドル箱路線、勢いが違う」という歓喜の声が上がる一方で、「一筋縄ではいかない上場初日だ」と今後の動向を注視するシビアな意見も飛び交いました。
航空会社を脅かす圧倒的な収益力と、SNSで囁かれる「ある不安」
京滬高速鉄路がこれほど注目される理由は、その驚異的なビジネスモデルにあります。北京と上海の間をわずか4時間半ほどで結ぶ高い利便性と、天候に左右されにくい正確な運行スケジュールを武器に、それまで飛行機を利用していたビジネス層をまたたく間に取り込みました。中国の広大な鉄道網の中でも、随一の稼ぎ頭として知られる驚異的な「黒字路線」なのです。
実際に公表された財務データを見ても、その強さは一目瞭然でしょう。2019年12月期の売上高は、前の期と比べて6%近く増加し、最大で330億元(日本円で約5300億円)に達する見通しです。さらに、本業の儲けを示す純利益は17%増の最大120億元を見込んでいます。この圧倒的な財務基盤があるからこそ、上場によって306億元という巨額の資金を市場から調達することに成功したのです。
しかし、SNSの投資コミュニティで物議を醸しているのは、この調達した資金の「使い道」に他なりません。企業が株式市場から広く集めたお金は、通常であれば自社のさらなる成長や設備投資に使われます。ところが今回の京滬高速鉄路は、その全額を「別の鉄道路線(京福安徽公司)の買収」に充てると発表しました。この方針が、市場の参加者たちに複雑な心理をもたらしています。
編集部が斬る!「国策の肩代わり」という試練とこれからの見通し
ここで専門用語を少し分かりやすく紐解いておきましょう。今回の株式公開(IPO)で得られた資金が、なぜ懸念されているのでしょうか。実は、買収対象となっている路線は現在、最終赤字(すべての経費を差し引いた結果として利益が残らず、損失が出ている状態)が続いている、いわば採算の取れていないルートなのです。なぜ、このような選択をしたのでしょうか。
ここには、中国政府が進めるインフラ(道路や鉄道といった社会基盤)整備を、優良企業である京滬高速鉄路が支えるという「国策の肩代わり」の側面が強く滲み出ています。この状況に対し、インターネット上では「黒字の利益が赤字路線の補填に消えてしまうのではないか」といった、将来の収益計画に対する不安や疑問の声が少なからず噴出しました。
ここからは、メディア編集部としての独自の視点をお伝えします。今回の赤字路線買収は、短期的には京滬高速鉄路の利益を圧迫するリスクをはらんでいることは否定できません。しかし、鉄道ビジネスは網の目のように路線が繋がってこそ真価を発揮するネットワーク産業です。安徽省周辺の路線を取り込むことで、長期的には新たな乗客を本流へ呼び込む相乗効果も期待できるでしょう。
中国トップのドル箱路線という絶対的なブランド力があるからこそ、政府もこの難題を託したのだと解釈できます。政府のインフラ戦略と、一民間企業としての利益追求をどのように両立させていくのかが、今後の大きな見どころとなるはずです。この試練を乗り越えて真の巨大鉄道企業へと脱皮できるのか、同社のこれからの舵取りから目が離せません。
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