普段私たちが身につけている洋服は、どのような道具で作られているでしょうか。服飾工場などで欠かせないミシン針の製造で、絶大な信頼を集める企業が長野県上田市にあります。それが、2020年で記念すべき創業100周年を迎える「オルガン針」です。
現在はスマートフォン製造に不可欠な電子部品の検査用ピンなども手がけていますが、その原点は独自のこだわりから始まりました。歴史を支えるのは、初代から受け継がれてきた徹底的な品質への執念です。
SNS上では「オルガン針のパッケージを見るだけで安心感が違う」「100年も日本の繊維産業を支え続けてきたのは本当にすごい」といった、長年のファンからの熱い声が多数寄せられています。
同社の歩みは1920年に、現社長の祖父である増島良三氏が東京でレコード用の針を作ったことからスタートしました。当時は海外からの輸入品が大半を占めており、国内生産の可能性を信じた良三氏は異業種から一念発起します。
技術もノウハウもない状態からの出発だったため、広島県の縫い針工場へ住み込みで修行に赴きました。必死に技術と機械の構造を学び取った良三氏は、東京に戻り個人事業として創業を果たします。
職人の熱意が込められた高品質なレコード針は瞬く間に評判を呼び、約10年後には国内トップクラスのシェアを誇るまでに成長しました。常に未来を見据える良三氏は、ラジオの普及という時代の変化を敏感に察知します。
そこで目を付けたのが、当時やはり外国産ばかりだったミシン針の国産化でした。試行錯誤を重ねた末、1939年に待望の製造機械を完成させます。親しみやすさと安心の象徴として、音楽を奏でる「オルガン」の名をブランドに冠しました。
創業者の品質へのこだわりは、周囲が驚くほど徹底していたといいます。常にルーペを持ち歩き、出張先から戻ると上着も脱がずに工場へ直行して状態を確かめました。納得のいかない製品は容赦なく土に埋め、納品を急ぐ業者と衝突することも日常茶飯事だったそうです。
こうしたモノづくりの魂は、戦火をくぐり抜ける中で拠点を長野県上田市へと移した後も、決して揺らぐことはありませんでした。戦後は衣服を編むためのメリヤス針や、不織布を作るフェルト針へと活躍の場を広げていきます。
さらに1979年には「プローブ」と呼ばれる電子部品関連の針の開発に成功しました。これは電子基板に正常な電気が流れているかを確かめる極小の検査ピンのことで、現代のスマートフォン製造にも欠かせない超精密技術です。
安価な海外製の針が出回る現代ですが、同社は生地や素材に合わせた適切な針の選択こそが、結果的に裁断や縫製のミスを防ぎコストを抑えると提唱します。妥協なき品質の追求こそが、次の100年へ向かう同社の誇り高い道標となるでしょう。
コメント