中南米の都市部で今、スマートフォンのアプリを活用したデリバリーサービスが驚異的なスピードで勢力を拡大しています。街を行き交うバイクや自転車の配達員たちは、すでに現地の新しい社会インフラとして定着しました。このブームの背景には、気軽な外出を阻む深刻な治安の悪化という地域特有の課題が存在します。ネット上では「危険な夜間に外出しなくて済むのは本当に助かる」「命の安全を買うと思えば安いものだ」といった切実な声が溢れており、市民の防犯意識の高まりが普及を力強く後押ししているようです。
日本でもお馴染みのフードデリバリーですが、中南米のサービスは一線を画しています。最大手のコロンビア発アプリ「Rappi(ラッピ)」を筆頭に、単なる飲食店の料理配達に留まりません。日用品の買い物代行から、自宅の忘れ物をオフィスへ届ける荷物配送、さらには現金の引き出しや自動車修理の手配まで、日常生活のあらゆる困りごとを網羅しています。1つのアプリで多様な機能を提供するこうしたシステムは「スーパーアプリ」と呼ばれ、決済や送金機能まで備えた万能ツールとして進化を遂げているのです。
利便性の高さは、既存のネット通販を凌駕するほど圧倒的だと言えるでしょう。例えば、世界的な大手ECサイトであっても、現地では物流インフラの未整備が災いし、商品の到着までに1週間以上を要することが珍しくありません。しかし、スマホ宅配であれば街中にいる最適な配達員と瞬時にマッチングされるため、わずか数十分で注文が手元に届きます。この即時性こそが最大の強みであり、1回あたり約400円という中間層が気軽に支払える手頃な料金設定も、爆発的なヒットに繋がった要因だと考えられます。
巨額のマネーが動く現地市場は、まさに群雄割拠の戦国時代を迎えています。ブラジルでは地元の「アイフード」が飲食店宅配で首位を走り、追うラッピは2019年11月に配達専門の料理人が共同利用する「コワーキングキッチン」の展開を発表しました。さらに2019年4月には、日本のソフトバンクグループから10億ドルという巨額の出資を受けたことでも話題を呼んでいます。他にも中国の滴滴出行(ディディ)傘下企業や、チリのベンチャーを買収したウーバーなど、世界中の巨大資本がこの覇権争いに火花を散らしています。
個人的には、このスマホ宅配の隆盛は単なるビジネスの成功例ではなく、地域の安全を守るセーフティネットとしての側面が強いと感じています。インフラの脆弱さや治安の悪さを民間企業のテクノロジーが補う構図は、非常に合理的で先進的です。もちろん、配達員の労働環境や安全確保といった課題は残されているでしょう。それでも、生活の質を劇的に変えるこのイノベーションが、中南米の経済をどこまで押し上げるのか目が離せません。勝者が誰になるのか、今後の展開が非常に楽しみです。
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