エンターテインメントの華やかな舞台裏には、いつの時代も時代を動かす仕掛け人たちが存在します。2020年1月25日に紹介された笹山敬輔氏の著書『興行師列伝』(新潮新書・820円)は、まさにその先駆者たちにスポットを当てた注目の一冊です。本作では、大手芸能事務所や映画会社として知られる松竹の創業者、大谷竹次郎氏をはじめとする5人の熱き実業家たちが登場します。明治から昭和という激動の時代を駆け抜け、日本の演劇や映画、演芸の基盤を築き上げた彼らの足跡から、現代へと続く芸能界の歴史を鮮やかに描き出しているのです。
本書は単なる成功譚にとどまらず、現代の私たちが読んでもハッとさせられるリアルな実態にまで踏み込んでいます。近年でも芸能界と裏社会との繋がりがニュースで取り沙汰される機会は少なくありませんが、当時の貴重な資料からは、その関係性が極めて根深いものであった事実が浮かび上がってきます。表舞台の華やかさと、それを支える泥臭い舞台裏のコントラストは非常に刺激的です。SNS上でも「今のエンタメ界の課題にも通じる生々しい歴史が知れて面白い」「点と点がつながるような興奮がある」と、知的好奇心を刺激された読者からの熱い反響が寄せられています。
さらに興味深いのは、演目の流行や興行形式の移り変わりといったソフト面だけでなく、ハード面における「劇場の近代化」にも深く切り込んでいる点でしょう。ここで言う近代化とは、主に衛生管理の徹底や、観客の安全性を第一に考えた構造改革などを指しています。それまでの日本の劇場は、過密で火災のリスクも高く、決して快適とは言えない環境でした。しかし、興行師たちがこれらを近代的なエンタメ空間へと生まれ変わらせていったプロセスは、ビジネスの視点からも非常に見応えがあります。身近なエンタメの歴史を社会学的なアプローチで学べるのが、本作の大きな魅力です。
私はこの本を読み、私たちが普段何気なく楽しんでいる映画や舞台が、いかに多くの先人たちの執念と変革によって支えられてきたかを痛感しました。不透明な部分を孕みながらも、観客を楽しませるために劇場という空間そのものを進化させた興行師たちの熱量には圧倒されるばかりです。ただ過去の出来事を並べる歴史書ではなく、現代のエンタメビジネスのあり方を客観的に見つめ直すためのバイブルとしても、非常に価値のある一冊だと言えます。エンタメファンはもちろん、仕掛け人たちの泥臭い人間ドラマに胸を熱くさせたいすべての人に、ぜひ手に取っていただきたい名著です。
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