歴史や時代を舞台にしたエンターテインメント小説の世界で、今まさに静かな熱いブームが巻き起こっています。オンデマンドによる書籍出版の技術向上を背景に、かつての名作が次々と復刊を遂げているのです。城昌幸氏の代表作の全集化や、これまで手に入りにくかった横溝正史氏の隠れた名作捕物帳が再び読めるようになり、本を愛する人々の間で大きな話題を呼んでいます。SNSでも「往年の名作が令和の時代に読めるなんて感無量だ」「本棚に並べたい」といった興奮の声が続々と上がっており、読書界隈を賑わせているようです。
そうした盛り上がりの象徴として、春陽堂書店から大変注目すべき全集の刊行が開始されました。巨匠・横溝正史氏の代名詞とも言える傑作を網羅した『完本人形佐七捕物帳(一)』です。このシリーズは全10巻の構成を予定しており、なんと史上初めて全180編の物語を発表された順番通りに完全収録するという、歴史的な快挙を成し遂げました。物語そのものの面白さは折り紙付きですが、それ以上に今回の書籍化が放つ価値は極めて高いと言えるでしょう。
徹底的なテキスト検証がもたらす歴史的価値
大衆文学の全集において、時に軽視されがちなのが「本文校訂(ほんぶんこうてい)」という作業です。これは、著者が遺した複数の原稿や掲載誌を細かく見比べ、誤字脱字を正しながら、最も著者の意図に近い正確な文章を決定する極めて重要なプロセスを指します。本作では、浜田知明氏による非常に綿密なテキスト・クリティック(文献学的批判)が施されました。さらに末國善己氏が詳細な解説を寄せており、まさにこれ以上ない完璧な仕上がりを見せています。
この本は美しい箱入りの豪華な装丁で仕上げられており、4500円(税抜き価格)という設定は、その圧倒的なクオリティを考えれば決して高くはありません。本物の価値を知る読者にとって、まさに家宝にしたい一冊となるはずです。このように過去の優れた文化資産が最高の形で保存され、現代の読者に届けられる試みは非常に意義深く、素晴らしいことだと私は確信しています。
今すぐ読みたい!あわせて注目すべき時代小説の秀作たち
さらに、2020年01月23日の時点で絶対に見逃せない、本選びのプロが太鼓判を押す時代小説が他にも登場しています。まずご紹介したいのが、西條奈加氏による『せき越えぬ』です。こちらの作品は、予期せぬ出来事から箱根の関所で働くことになった若者の心の成長を描いた見事な青春歴史劇に仕上がっています。これまでここまで深く関所の内部事情や実態を描き切った小説は存在せず、終盤に向けて高まっていく物語の緊迫感は息をのむほど見事です。
もう一冊の注目作は、藤原緋沙子氏の『冬の虹』です。長年にわたりファンに愛され、全6巻で紡がれてきた人気シリーズ「切り絵図屋清七」が、ついに感動の最終回を迎えました。作中では、主人公たちの店が繁盛することを妬む悪徳業者が、卑劣な罠を次々と仕掛けてきます。困難を乗り越えた先に待つ結末は、まさに胸がいっぱいになること間違いありません。寒さ残る季節の読書に、これら至高の歴史ロマンをぜひ深く味わってみてはいかがでしょうか。
コメント