2020年2月1日、日本の製造業において圧倒的な高収益を誇るキーエンスが発表した2019年4月1日から2019年12月31日までの決算は、多くの市場関係者を驚かせました。連結純利益は前年同期比で13%減の1478億円となり、10年ぶりの減益という結果を突きつけられたのです。FA、すなわちファクトリーオートメーションとは工場での生産工程を自動化する技術のことで、キーエンスはこの分野で欠かせないセンサーや計測機器を提供するトップランナーです。しかし、世界的な設備投資の停滞という荒波には、さすがの同社も抗うことができなかったようです。
売上高についても前年同期比7%減の4113億円と、厳しい数字が並びました。品質向上や人手不足解消を目指す企業による設備投資が手控えられたことで、主力製品であるFA用センサーや研究開発用計測器の販売が伸び悩んだことが主な要因です。SNS上でも「あのキーエンスが苦戦するほど世界経済が冷え込んでいるのか」といった驚きや、「今後の国内製造業の先行きが不安だ」といった、市場の潮目の変化を敏感に感じ取ったユーザーからの投稿が相次いでいます。
世界規模で広がる設備投資抑制の波
今回の決算で顕著だったのは、海外市場の失速です。キーエンスの売上の53%を占める海外売上高は、全体で8%のマイナスとなりました。内訳を見ると北中南米で9%減、中国を含むアジア圏で7%減、欧州その他地域でも8%減と、まさに世界各地で設備投資に対する慎重な姿勢が強まっていることが浮き彫りになりました。日本国内ですら5%の減収となっており、地域を問わず製造現場が静まり返っている現状を物語っています。
営業利益も14%減の2060億円となり、業績の勢いには陰りが見えます。同社は現在、2020年3月期通期の業績見通しをあえて公表していません。その背景には、先行き不透明感の強さがあります。現地通貨ベースで下げ止まりの兆しを見せる地域もあるものの、これが本格的な回復につながるかは予断を許さない状況でしょう。市場予想平均であるQUICKコンセンサスでは、売上高や営業利益の減少が見込まれており、厳しい視線が向けられているのは事実です。
編集者としての私の考えですが、キーエンスのような高付加価値製品を扱う企業が苦戦しているという事実は、製造業全体が抱える構造的な悩みを映し出しているように感じます。単なる一時的な落ち込みではなく、世界的な貿易環境の変化がいかに産業の根幹を揺るがすかを突きつけられた格好です。しかし、裏を返せば、これほど技術力が高い企業であっても、市場環境には抗えないという現実を我々は厳粛に受け止めるべきではないでしょうか。今後、再び活発な設備投資が戻ってくるのか、それとも新しいビジネスモデルへの転換が求められるのか、目が離せません。
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