インバウンド戦略の切り札となるか?東洋大・佐々木教授に聞く統合型リゾート(IR)が日本経済にもたらす価値

2020年2月1日現在、関西の大阪府・市や和歌山県などが誘致を進め、大きな注目を集めているのが「統合型リゾート(IR)」です。この施設は単なるカジノ施設ではなく、国際会議場や展示場、ホテル、商業施設が一体となった複合的なリゾートを指します。では、なぜ今、日本でこの開発が求められているのでしょうか。

東洋大学でIR研究を専門とする佐々木一彰教授は、訪日外国人観光客の「客単価の向上」が大きな鍵になると説いています。現在、観光庁なども推進している「MICE」と呼ばれる、国際会議や見本市に関連する商用客は、一般的な観光客と比較して消費額が2倍に達するという試算もあります。IRはこのMICE機能を核としつつ、カジノや華やかなショーといった娯楽を提供することで、日本で不足しがちと言われる「コト消費」の受け皿を創出する役割が期待されているのです。

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カジノはなぜ必要なのか、そしてアジアでの競争力

「カジノ抜きの施設ではいけないのか」という疑問に対し、佐々木教授は経済的な観点から明快な答えを示しています。IRのビジネスモデルにおいて、極めて収益性が高いカジノの利益は、多額の初期投資を要するMICE施設や商業施設を維持するための原資となります。民間企業単独では大規模な国際会議場の建設と投資回収を両立させることは極めて困難であり、かといって安易に税金を投入することも現実的ではありません。この「収益の高い事業が公共性の高い施設を支える」という構造こそが、IRの根幹と言えるでしょう。

また、アジア各地で相次ぐIR開発による競争激化についても、悲観的な見方は必要ないようです。佐々木教授は、日本が目指すIRは海外の小規模なカジノとは一線を画すと見ています。むしろ、日本が持つ豊かな観光資源とIRをいかに連携させるかが勝負であり、ヘリコプターやクルーズ船を活用したIR周辺への送客手段など、移動そのものをエンターテインメント化する新たな試みが重要な差別化要因となるはずです。

持続可能な観光と地域経済への波及効果

昨今、京都などで深刻化する「オーバーツーリズム(観光公害)」への懸念に対しても、佐々木教授は客単価を上げる重要性を強調しています。人数を追うのではなく、滞在満足度を高めるIRがその一助となり、地方への観光客分散を促すことで混雑緩和に寄与するという考え方です。SNS上でも、「観光地が疲弊する現状を変えるには、消費額の高い層をターゲットにすべき」といった意見や、「雇用の受け皿として、景気下支えになるなら歓迎」という期待の声が見受けられます。

私個人としても、IRは単なる経済活性化の手段にとどまらず、日本の観光の質を根本から見直す好機だと感じています。特に、地元企業が巨大なIRという商機を捉え、自社のサービスを磨き上げていく姿勢こそが、真の地域活性化へとつながるのではないでしょうか。IRが単なる巨大な箱物で終わらず、地域経済を力強く支えるエンジンとなるよう、今後の動向を注視していく必要があるでしょう。

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