皆さんは、「国際協力」という言葉からどのような仕事をイメージされるでしょうか。外交官や国連職員のような華やかな姿を思い浮かべるかもしれませんが、その裏側には、緻密な調整と現場での泥臭い闘いがあります。2020年2月5日に紹介された、アジア開発銀行駐日代表・児玉治美さんのキャリアは、まさにその「解決の現場」を駆け抜けてきた挑戦の記録です。
児玉さんの原点は、高校時代に遡ります。冷戦崩壊直前の米国ミシガン州で、多様な国籍の友人と世界の未来を議論した日々が、国際政治への関心を決定づけました。帰国後、国際基督教大学(ICU)大学院で打ち込んだのが「模擬国連」です。これは学生たちが各国の代表になりきり、実際の国連の議題について議論する活動のこと。彼女はパレスチナ解放機構(PLO)やアフリカ民族会議(ANC)などの立場から、紛争解決の道筋を探るという極めて高度な訓練を積み重ねました。
政治の現場から、途上国の最前線へ
大学院修了後、児玉さんは堂本暁子参院議員の政策担当秘書として、国際政治の裏側を支えるロビー活動に飛び込みます。ここで重要な役割を担うのが「ロビー活動」です。これは、特定の主張や方針を政策に反映させるために、政府や組織に対して働きかけを行う活動を指します。わずか数行の文章を国際的な行動計画に盛り込ませることで、各国の政策を動かす。この調整作業こそが、世界の問題解決に不可欠なピースなのです。
1994年の国際人口・開発会議での経験を経て、彼女は1997年に国際NGO「ジョイセフ」へ転職します。そこで任されたのは、バハマでの「思春期保健プロジェクト」でした。バハマといえば美しいリゾート地のイメージがありますが、現地ではHIV感染予防や、10代の望まない妊娠が社会課題となっていました。しかし、キリスト教の信仰が根付く土地柄、性教育を行うことへの反発は根強く、現地のスタッフが次々と辞めてしまうという厳しい現実に直面しました。
それでも児玉さんは諦めませんでした。現地の価値観を尊重しながらも、現実的な問題を解決するための重要性を粘り強く説き続けたのです。その結果、問題解決に意欲的な進歩的なスタッフとの協働が実を結び、プロジェクトは2年目から大きな成果を上げるようになりました。
SNS上でも、「華やかな国際舞台の裏側にある、泥臭くも尊い調整能力に感銘を受けた」「信仰や価値観の壁をどう乗り越えるか、という視点はどんな仕事にも通じる教訓だ」といった声が上がっています。国境や専門分野の境界を越えて、「解決のために何が必要か」を問い続ける児玉さんの姿勢は、今の時代を生きる私たちに大きなヒントをくれるのではないでしょうか。困難な状況でも信念を持って対話を続けることこそが、未来を少しずつ変えていく道筋なのかもしれません。
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