2019年08月24日、日本が直面している深刻な労働力不足を背景に、ある制度の存在意義が大きく揺らいでいます。それは、発展途上国の人材を育成し、技術を母国へ持ち帰ってもらうことで国際貢献を果たすという、輝かしい理想を掲げた「外国人技能実習制度」です。しかし、その実態は理想とは程遠く、不足する単純労働力を補うための「裏口」として機能してきたことは、もはや公然の事実と言わざるを得ません。現場からは悲鳴に近い声が上がり続けており、制度の根本的な見直しが急務となっています。
厚生労働省が発表した2018年度の調査結果には、驚くべき実態が記録されています。実習生を受け入れている事業所のうち、なんと約7割にあたる5,160件で、長時間残業や賃金の未払いといった深刻な法令違反が発覚しました。この数字は前年比で22%も増加しており、5年連続で過去最多を更新し続けるという異常事態に陥っています。SNS上でも「これでは現代の奴隷制ではないか」といった厳しい批判が相次いでおり、日本という国の倫理観が世界から問われているといっても過言ではありません。
なぜ、これほどまでに問題が深刻化してしまったのでしょうか。その背景には、実習生が「労働者」としての基本的な権利を制限されているという構造的な歪みが存在します。現在のルールでは、実習生は働く場所を自由に選ぶことができず、原則として「転籍」、つまり転職が認められていません。雇用主に対して圧倒的に弱い立場に置かれているため、過酷な環境であっても声を上げられず、耐え忍ぶしかないという閉塞感が現場を支配しているのです。
改正入管法の施行と「特定技能」への移行が抱える矛盾
2019年04月には改正出入国管理法が施行され、新たな在留資格である「特定技能」が新設されました。これは、一定の専門性を持つ外国人が、正式な労働力として日本に滞在できる画期的な仕組みです。この正規ルートが誕生したことにより、本来であれば国際協力を目的としていた技能実習制度は、その役割を終えて廃止を検討すべき段階にあります。しかし、政府は実習生を特定技能へ移行するための「前段階」として位置づけ、制度を延命させる道を選びました。
本来なら母国に技術を還元すべき人材を、そのまま日本で働かせ続けようとする姿勢は、政府自らが掲げてきた「国際協力」という建前を放棄したに等しいと言えるでしょう。本音では労働力が欲しいだけなのに、美しい言葉で包み隠す不誠実さが、さらなる悲劇を生む懸念を拭えません。実習生たちが「将来、特定技能の資格を得るため」という希望を人質に取られ、今以上の不当な扱いや過酷な労働環境を我慢せざるを得ない状況に追い込まれることを、私は強く危惧しています。
編集者の視点から言わせていただくならば、今こそ日本は「外国人から選ばれる国」になるための覚悟を決めるべき時期ではないでしょうか。二重構造となった複雑な制度を整理し、労働力の受け入れルートを「特定技能」へと一本化することが、透明性の高い労働市場を築く第一歩となります。実習生の権利を保護し、対等なパートナーとして彼らを迎え入れる姿勢こそが、日本の未来を守る鍵となります。不透明な「実習」という名の労働に終止符を打つ時が、まさに今来ているのです。
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