2020年2月4日、日本の日用品業界を牽引する花王が、2019年12月期の連結決算を発表しました。今回の結果で注目すべきは、純利益が前期比4%減の1482億円となり、2012年の決算期変更以来、初めての減益に転じたという点です。長年、高い成長を維持してきた同社において、この数字は多くの市場関係者に驚きをもって迎えられました。
この結果に対し、ネット上では「日用品でさえ買い控えが起きているのか」「増税の影響がここまで色濃く出るものなのか」といった驚きや懸念の声がSNSで拡散されています。消費者の生活防衛意識が非常に高まっている現実を、多くのユーザーが肌で感じているようです。
想定を超えた増税の影響と苦戦の理由
では、なぜこれほどの結果になったのでしょうか。花王の沢田道隆社長は記者会見の場で、「想定していた以上に増税後の落ち込みが大きかった」と語っています。企業側は、2019年10月の消費増税前に駆け込み需要が発生し、その後はストックした商品の消費が進むことで、むしろ利益が押し上げられるシナリオを描いていました。
しかし実際には、増税前の駆け込み需要は予想を下回りました。さらに、秋冬の商戦期に消費者の買い控えが重なってしまったことで、主力の日用品販売が大きく振るわなかったのです。これは、企業が描いた需要予測と、実際の消費者の行動に大きな乖離があったことを示しています。
また、同社の柱である「ヒューマンヘルスケア事業」も苦戦を強いられました。特に紙おむつ「メリーズ」において、中国での販売体制に変化がありました。2019年1月から中国当局による電子商取引(EC)事業者への規制が強化され、いわゆる「爆買い」を支えていた転売業者が在庫を安値処分したため、正規品の販売が伸び悩んだのです。
グローバル環境下でのケミカル事業と今後の展望
さらに、全体の売上高の約2割を占める「ケミカル事業」も厳しい状況です。この事業は、主に工業製品向けの原材料を扱っています。米中貿易摩擦の影響で、中国の自動車需要が減速したことが響き、タイヤゴムの添加剤などが苦戦しました。国際的な経済情勢が、直接的に売上に影響を与える構造が浮き彫りになっています。
厳しい経営環境の一方で、投資家にとって明るいニュースもありました。花王は、1株あたりの配当を10円増額し、130円とすることを決定しました。これにより、日本の上場企業としては最長となる30期連続の増配を達成しています。株主を大切にする姿勢は、同社の変わらぬ強みだと言えるでしょう。
今後の2020年12月期について、会社側は業績予想に幅を持たせるという異例の対応を取りました。その背景には、中国で感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎という、極めて不透明な要素があるからです。沢田社長も「先行きを見通すのが難しい」と語っており、慎重な姿勢を崩していません。
しかし、ただ守勢に回るわけではありません。2020年12月期は、現在の中期経営計画の最終年度に当たります。花王は、人工皮膚技術「ファインファイバー」や、肌を解析する「皮脂RNAモニタリング技術」といった最先端の独自技術を駆使し、製品の高付加価値化を図る戦略です。私は、この難局においてこそ、こうした技術力という原点回帰が、真の競争力を生む鍵になると信じています。
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