株価急変でも動かない個人投資家たち――デイトレーダー高齢化が市場に与える影

2020年2月4日の東京株式市場では、新型肺炎への警戒感から一転し、日経平均株価が反発を見せました。市場関係者が注目していたのは、個人デイトレーダーたちの動きです。しかし、手元には豊富な待機資金がありながらも、彼らの買いにはかつてのような力強さが感じられません。この背景には、実はデイトレーダーの高齢化という静かな、しかし深刻な構造変化が潜んでいます。

証券会社などのデータによれば、この日、個人投資家全体では買い越しとなっていました。インバウンド関連銘柄など一部では強気な動きも見られましたが、市場全体を牽引するほどの広がりには欠けていたのです。投資家が株価の安値を見極めて買い向かう「逆張り」の勢いは、往時の活気を失っているように見受けられます。

スポンサーリンク

眠れる資金とブラック・スワンの衝撃

昨夏以降、相場がじりじりと上昇する展開が続いたことで、多くの個人投資家は逆張りの好機を逃し続けてきました。その結果、投資資金の待機場所であるMRF(マネー・リザーブ・ファンド)の残高は、2019年末時点で約12兆6000億円と、約2年ぶりの高水準に達していました。MRFとは、証券口座に入れてある待機資金を運用する投資信託の一種で、いつでも株式購入に回せる資金の備蓄のようなものです。

そこに年明け以降、中東情勢の緊迫や新型肺炎の拡大といった、「ブラック・スワン」が立て続けに到来しました。ブラック・スワンとは、発生確率が極めて低く、予想外でありながら、起きた時の衝撃が計り知れない事象を指す金融用語です。本来なら、こうした急落局面こそ、デイトレーダーの腕の見せ所といえる場面でしょう。しかし、MRFの残高は1月末時点で依然として12兆4500億円と、ほとんど減少していませんでした。

進まない世代交代と市場の変化

なぜ、チャンスの局面で資金が動かないのでしょうか。松井証券の和里田聡専務は、ネット証券の顧客層における高齢化の影響を指摘しています。1999年の売買手数料完全自由化以降、ネット証券の黎明期を支えたベテラン投資家たちが、そのまま年齢を重ねているのです。現在、約定代金の大部分を50代以上、さらには70代以上が占めるというデータもあり、デイトレーダーの世代交代が停滞している現状が浮かび上がります。

若い世代は、より少額から参加できる外国為替証拠金取引(FX)や暗号資産へ流れる傾向にあります。一方で、長年デイトレーダーとして活躍してきた世代にとっては、画面を注視して瞬時に判断を下すスタイルは、年々体力的な負担が大きくなっていることでしょう。加えて、近年の市場では、日銀によるETF買いや、アルゴリズムを用いてミリ秒単位で超高速売買を行う「HFT(高速取引)」業者の台頭により、人間の判断で勝つことが以前よりも難しくなっています。

デイトレーダーの寄る年波は、単なる一業界の現象ではありません。かつて、外国人投資家と個人のデイトレーダーが対峙することで市場の流動性は保たれてきました。個人の存在感が薄れることは、市場全体の値付け機能そのものにじわりと影響を与える可能性があるのではないでしょうか。SNS上でも「かつての熱気が懐かしい」といった声が聞かれますが、相場環境の変化に合わせて、私たち投資家も進化を求められているのかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました