テレビ番組やSNSで目にする「食レポ」という文化。タレントが一口食べた瞬間に目を見開き、絶妙なコメントを繰り出す姿はお馴染みですが、その裏側には意外な苦労と計算があるようです。お笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世さんは、2019年09月14日に公開されたコラムの中で、自身の幼少期の体験と、現在の「食レポ」に対する複雑な胸中を綴っています。
幼い頃、父親の教育方針でテレビやゲームから遠ざけられていたという山田さん。当時の子供たちの共通言語であった娯楽に触れられない辛さを味わった経験から、現在は愛娘に自由を与えています。しかし、その結果として小学1年生の長女が、まるでテレビの食レポタレントのようにオーバーリアクションで食事を評する姿に、微笑ましさと共に少しばかりの不気味さを感じているようです。
プロが明かす!食レポを乗り切る「逆張り」の定石とは
100キロを超える恰幅の良い体格から食レポの依頼も多い山田さんですが、実はこの仕事が苦手だと告白しています。特別な味覚や食べ歩きの趣味があるわけではないため、もっともらしいコメントを口にするたび、ふと我に返り恥ずかしさに襲われるのだとか。そんな彼が頼りにしているのは、先人たちが築き上げた「食レポのセオリー」に基づいた見よう見まねの技術です。
その代表的な手法が「逆張り」と呼ばれるテクニックです。たとえば、いかにも濃厚そうな豚骨ラーメンを食べた際には「意外とあっさりしています!」と述べ、逆にあっさりした料理には「見た目と違ってコクがある」と評します。これは、自分の第一印象が外れていたと演出することで、料理に意外な奥行きがあるように見せる、食レポ界では定番の立ち回りと言えるでしょう。
さらに、味の表現に困った際の「キラーフレーズ」も存在します。珍味には「ご飯や酒が進む」と丸投げし、特徴が見つからないときは「臭みがない」と一蹴。そして究極の魔法の言葉が「甘い!」です。肉でも野菜でも、甘みに言及すればそれらしく聞こえるという法則は、SNS上でも「確かにテレビでよく聞く言葉だ」と共感の声を集めるポイントとなっています。
水は甘くなかった?「食レポ」ならぬ「職レポ」の厳しさ
山田さんは、過去に自身のラジオ番組で起きた衝撃的なエピソードも明かしています。中継で「利き水」に挑んだレポーターが、一口目の水道水に対して「甘みが口にブワーッと広がる!」と絶叫したというのです。本来無味無臭であるはずの水に甘みを感じてしまう、食レポという仕事が生んだ悲しき「職業病」とも言える過剰演出に、彼は冷ややかなツッコミを入れずにはいられませんでした。
「美味しいものが食べられて羨ましい」という周囲の言葉に対し、山田さんは「水もこの仕事もそんなに甘くない」と締めくくります。食レポとは、単なる食事の感想ではなく、芸人として生計を立てるための「職レポ」であるという彼の言葉には、プロとしての矜持と切実さが滲んでいます。華やかな画面の裏側にある、こうした技術と苦労を知ることで、これからのグルメ番組がより深く楽しめるかもしれませんね。
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