連日ニュースやSNSのタイムラインを埋め尽くす新型コロナウイルスの話題ですが、その余波は遠く離れた欧州の金融トップの口からも語られる事態となりました。欧州の単一通貨ユーロの金融政策を担う欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、2020年2月5日、フランスのパリ市内で開かれた講演に登壇しました。
そのスピーチのなかで彼女は、現在中国を中心に猛威を振るう新型コロナウイルスが、世界経済に「新たな不確実性」をもたらしていると強い言葉で警告を発しています。未知のウイルスによる脅威が、いかにして今後の景気シナリオに影を落としていくのか、金融の最前線でも警戒感が急速に高まっていると言えるでしょう。
わずか2週間での方針転換とサプライチェーンへの懸念
つい先日の2020年1月下旬に行われた記者会見では、米中の貿易摩擦の緩和やイギリスのEU離脱問題の進展を理由に、経済に対するリスクは「薄れつつある」と前向きな見解を示していたばかりでした。しかし、そこからわずか2週間足らずで、ラガルド総裁はリスク認識の大幅な軌道修正を迫られることになったわけです。
現在SNS上でも「中国の工場がストップして製品が入ってこない」「欧州経済が傾けば日本もただじゃ済まない」といった不安の声が飛び交っていますが、これこそが懸念される「サプライチェーン(供給網)」の寸断です。製品の部品調達から製造、そして流通までの連鎖が途切れることは、世界経済の血流が止まることを意味します。
欧州連合(EU)にとって、中国はアメリカと並ぶ巨大な貿易パートナーに他なりません。もし中国経済がこのまま減速の道を辿れば、輸出の落ち込みなどを通じてヨーロッパ経済が大打撃を受けることは想像に難くないでしょう。せっかく底打ちして上向きかけていた企業の景況感が、再び冷や水を浴びせられる危険性が浮上しています。
気候変動への取り組みとこれからの見通し
一方で、目先のウイルス対策や暗いニュースばかりではありません。ラガルド総裁は、2020年1月からスタートした金融政策などの戦略的見直しにおいて、気候変動対策が重要な柱になることを改めて強調しました。銀行監督の分野において、金融機関が抱える環境リスクの開示を評価する仕組みづくりなどを着々と進めている模様です。
環境分野における基準の構築やグリーン投資については、「ヨーロッパが世界を牽引できる領域である」と彼女は自信を覗かせており、ECBとしても積極的にこの課題に立ち向かう姿勢を鮮明にしています。緊急の危機に対応しつつも、地球規模の長期的な課題から目を背けない態度は、非常に評価できるポイントだと感じます。
私自身、今回のニュースを通して強く感じるのは、現代のグローバル経済がいかに密接に繋がり合っているかという事実です。新型コロナウイルスの問題を「対岸の火事」として捉えるのではなく、回り回って私たちの働き方や生活インフラに直結する危機として認識すべきだと考えます。今後の動向から決して目が離せません。
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