世界中から「もっと財政出動で景気を刺激すべきだ」と強い圧力を受けているドイツ。国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)などの主要機関、さらには欧州連合(EU)加盟国からも、ドイツが財政規律を緩め、もっと支出を増やすことを期待する声が絶えません。ドイツ国内でも一部の政党が、財政収支の均衡を義務づける「債務ブレーキルール」に対して疑問を投げかける動きが出ています。果たして、世界のマクロ経済の潮流に逆行しているように見えるドイツの姿勢は、本当に間違いなのでしょうか。
経済の現状を冷静に分析してみましょう。2019年のドイツの成長率は0.5%と低調でしたが、決して経済が後退しているわけではありません。設備稼働率は2015年末からフル稼働の状態が続いており、経済はむしろ限界に近いところで動いています。確かに製造業には停滞感が見られますが、サービス業は急成長を続けていますし、建設業も活況です。労働市場も堅調で、個人消費も伸びています。つまり、設備がフル稼働している現状において、これ以上の財政出動はかえって経済の過熱を招きかねず、必ずしも適切な処方箋とは言えないでしょう。
インフラ投資を阻むのは「予算」ではなく「構造」
よく指摘される「インフラ投資が足りない」という批判についても再考が必要です。ドイツが道路や鉄道、ITインフラなどに問題を抱えているのは事実ですが、それを阻んでいるのは決して予算不足ではありません。実は、建設業界はここ数年、フル稼働の状態が続き、深刻な人手不足に悩まされています。公共投資を増やそうとしても、建設価格が上昇するだけで、現場の供給能力が追いついていないのが現実なのです。
さらに深刻なのは、複雑に入り組んだ規制の壁です。住宅・建築関連法や環境関連法、消費者保護法などの法律がうまく整合しておらず、官民を問わず投資意欲を削ぐ要因となっています。公共投資を単に増やすだけでは限界があり、まずはこうした硬直化した制度や法律の不整合を正すという、地道な「構造改革」こそが今、求められているのではないでしょうか。
次世代を育てるための抜本的な改革へ
今、ドイツが真剣に取り組むべきは、生産性向上につながるイノベーション(技術革新)の促進です。現状では、新しいアイデアを持つスタートアップ企業がなかなか育ちにくい環境にあります。大企業と同様の厳しい規制に縛られていることに加え、資本市場が未成熟で、リスクマネーの供給も不足しているからです。
こうした企業への資金調達を支援する政策や、法人税改革を通じて投資家にとっての魅力を高めること。これらこそが、ドイツ経済の活力を取り戻す鍵となるはずです。SNS上でも「ただ金をバラ撒くのではなく、足元の産業構造を根本から変える必要がある」「規制緩和こそが最大の景気対策」といった、専門家のアプローチに共感する意見が散見されます。
構造改革には時間がかかりますし、決して華やかな政策ではないかもしれません。しかし、長期的な視点に立てば、安易な財政出動に頼るよりも、はるかに持続可能で効果的な手段であることは明らかです。ドイツが誇る経済の強さを維持し、将来の競争力を高めるために、今こそ勇気を持って構造改革という「本質的な課題」に挑むべき時でしょう。
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