広島県呉市に衝撃が走っています。日本製鉄は、子会社である日鉄日新製鋼の呉製鉄所を2023年度上期までに全面的に休止することを、2020年2月7日に発表いたしました。関連企業を合わせるとおよそ3000人規模の雇用に影響が及ぶと見られており、これは広島県内における工場の閉鎖や休止の事例としては過去最大級の規模となります。
この突然の発表を受けて、インターネット上のSNSでも悲痛な声が次々と上がっている状況です。「かつて戦艦大和を建造した海軍工廠の歴史を継ぐ場所が消えてしまうのは寂しい」「3000人の雇用がなくなったら街の活気が失われてしまうのではないか」といった、地元の未来を不安視する書き込みが相次いでおり、地域住民の動揺の深さがうかがえます。
呉市は、2018年7月に発生した西日本豪雨によって甚大な被害を受けたばかりであり、現在はまさに復興の途上にあります。地域経済が傷を癒やす間もなく突きつけられた今回の巨大工場の閉鎖という現実は、市にとってあまりにも重い新たな試練と言わざるを得ません。新原芳明市長は大変残念であると胸中を明かし、最大限の対策を講じる意向を示しています。
事態を重く見た呉市は、2020年2月10日に広島県と合同で対策本部を発足させる予定です。過去の事例を振り返ると、2012年にエルピーダメモリが経営破綻した際には、翌年の2013年にアメリカの企業が買収したことで雇用が守られたケースがありました。しかし今回の製鉄所に関しては、他企業への譲渡や事業の継承が行われるかは不透明なままです。
重厚長大産業の衰退がもたらす街の空洞化リスク
ここでいう重厚長大産業(じゅうこうちょうだいさんぎょう)とは、鉄鋼や造船、化学といった、重量があり規模の大きな製品を製造する基礎資材産業のことを指します。かつて瀬戸内海沿岸の繁栄を牽引してきたこの産業ですが、近年の世界的な需要の変化や競争の激化により、構造改革を迫られているのが現状でしょう。
もしも日本製鉄が呉の広大な土地や設備を完全に手放すことになれば、市が毎年得ていた数億円規模の固定資産税の収入が途絶えてしまいます。固定資産税とは、土地や建物などの資産を所有している人や企業に対して地方自治体が科す税金のことです。この貴重な財源を失うことは、呉市の財政にとって決定的な痛手となるに違いありません。
現在の呉市は、アニメ映画の人気などによって観光業に追い風が吹いているものの、それだけで基幹産業の縮小を補うのは困難です。さらに、主要駅の前にある商業施設跡地の再開発も進んでおらず、街の玄関口にあたるエリアの空洞化が進めば、都市としてのブランドイメージが大きく低下してしまうのではないかと私は深く危惧しております。
広島県は、2019年の人口の転出超過が8000人を超えて全国ワーストを記録しており、若者を中心とした地方からの人口流出が深刻な課題となっています。地域経済を支える雇用の場をこれ以上失わないためにも、行政と企業が一体となったスピーディーで実効性のある支援策の策定が、今まさに求められていると言えるでしょう。
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