素材大手の東レが2020年2月10日、2020年3月期の連結純利益見通しを大幅に引き下げました。当初は前期比で5%の増益を見込んでいましたが、一転して9%減の720億円に落ち込む見通しです。このニュースに対し、SNSでは「東レほどの企業でも世界経済の減速には抗えないのか」「新型肺炎の影響がこれほど早く数字に出るとは恐ろしい」といった驚きや懸念の声が相次いでいます。グローバル展開する大企業だからこそ、世界情勢の波をダイレクトに受けてしまった形と言えるでしょう。
業績悪化の背景にあるのは、長期化する米中貿易摩擦に伴う中国経済の失速です。衣料品向けの合成繊維や、スマートフォン関連の機能化成品といった主力事業が軒並み苦戦を強いられています。スマートフォン市場の成長鈍化や、自動車業界全体の低迷が、東レの先端材料への需要を直撃した格好です。筆者は、同社の高い技術力をもってしても、世界的な消費の冷え込みをカバーするのは極めて困難であったと感じており、サプライチェーン全体の連鎖的な冷え込みを強く実感しています。
複合的な悪条件が重なる機能化成品と炭素繊維事業
さらに追い打ちをかけているのが、異常気象による暖冬です。冬物衣料の売れ行きが伸び悩んだことで、東レが展開する縫製品の販売も想定を下回りました。また、電気自動車などに欠かせない「リチウムイオン電池向けセパレーター(絶縁材)」も車載需要の低下によりブレーキがかかっています。セパレーターとは、電池の正極と負極を隔離してショートを防ぎつつ、イオンだけを通過させる重要な膜のことです。先端技術を支える基幹部材の需要減は、今後のハイテク産業全体の先行きにも影を落としています。
東レの強みである炭素繊維複合材料事業も、今回は厳しい局面を迎えています。米ボーイング社が主力中型機「787」の減産に踏み切ったことで、航空機向け炭素繊維の出荷時期が後ろにずれるなどの影響が避けられない状況です。現時点で株価は一時、前週末比で4%安の701円10銭まで売られ、約6カ月ぶりの安値を記録しました。これほどの悪条件が重なる中でも、東レが持つ強固な技術基盤は健在であり、現在は世界的な危機を乗り越えるための耐え忍ぶ時期なのだと私は捉えています。
コメント