猫の引越しはまるで命がけ?愛猫との絆を深める「ホタテ大作戦」と驚きの脱出劇

愛するペットとの新生活はワクワクするものですが、猫を飼っている方にとって避けて通れない大きな壁が「引越し」ではないでしょうか。環境の変化にとても敏感な生き物である猫は、住まいが変わることを極めて嫌う傾向にあります。美術史家の金沢百枝さんが明かした愛猫「トロ」との引越しにまつわるエピソードが、今まさにネット上で「共感しかない」「まるで壮絶なバトルだ」と大きな話題を呼んでいます。

トロとの出会いは、ある夏の夜のことでした。論文執筆に熱中していた金沢さんが息抜きに外へ出た際、駐車場の車の下でたたずむ子猫たちを発見したのが始まりです。手元にあった魚肉ソーセージを差し出すと、子猫たちは嬉しそうに駆け寄ってきました。季節が移り変わり、2019年の冬を迎える頃には、2匹の子猫は金沢さんの自宅で心地よさそうに眠るようになっていたのです。夕方に訪れては朝方に去っていくその自由奔放な姿は、まるで優雅な王朝貴族のようでした。

そんなある日、サバトラ模様のトロが足を引きずって帰宅するというアクシデントが発生します。金沢さんは必死の思いでケージに入れて動物病院へ連れて行きました。幸いにも怪我はすぐに回復したものの、この一件が原因でトロはケージだけでなく、人間そのものに対して恐怖心を抱くようになってしまったのです。その後、体が立派に成長したトロは屋根から屋根へと飛び移るほど活発になり、野生の本能を爆発させていきました。

そして迎えた引越しの当日。環境が大きく変わる引っ越しにおいて、猫を安全に移動させるためのキャリーバッグ(ケージ)にスムーズに入れることは最優先事項です。金沢さんは事前に獣医師と相談し、精神安定を目的とした睡眠薬を大好物のホタテの刺身に混ぜる作戦を決行しました。しかし、野生の勘が働いたのか薬は全く効きません。それどころか、興奮状態に陥ったトロは部屋中を絶叫しながら激しく逃げ回り始めました。

その激しい抵抗ぶりは、まさに中世の絵画さながらの死闘でした。フランドル絵画の巨匠であるピーテル・ブリューゲルが描いた《ネーデルラントの諺》という作品には、重装備の騎士が猫の首に鈴をつけようとする奇妙な図があります。これは「不可能なことに挑む愚かさ」を意味する風刺ですが、金沢さんもまさにそんな決死の覚悟で挑みました。手は血に染まり、デニム越しに爪が食い込むほどの猛反撃に遭いながらも、最後は愛の咆哮で見事に捕獲を成功させたのです。

新居に到着後、完全室内飼いの「家猫」にさせようと試みた金沢さんでしたが、外の世界を愛するトロは昼夜を問わず鳴き続けました。根負けして窓を開けると、トロは一目散に元いた懐かしい街へと脱走してしまったのです。困り果てた金沢さんが思いついたのが、童話『ヘンゼルとグレーテル』をヒントにした、ホタテの刺身を道に点々と並べて新居へ誘導する奇策でした。トロは一切れのホタテを食べては歩みを勧め、無事に新しい家へと導かれていきました。

SNS上ではこのエピソードに対し、「ホタテの道を作るなんて愛に溢れている」「我が家の引越しを思い出して涙が出た」といった感動の声が続々と寄せられています。猫の個性を尊重しながら、どこまでも根気強く向き合う金沢さんの姿勢には、深い愛情と確固たる覚悟が感じられます。ペットを家族として迎えるということは、人間の都合を押し付けるのではなく、彼らの野生や生き方そのものを丸ごと受け入れることなのだと、改めて教えてくれる素敵な物語です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました